毎年5月実施｜ポーランドの全国共通高校卒業試験”マトゥラ”と変わった習慣

大学入試だが進学しなくても受験
必須科目は国語、数学、外国語
そのほかの科目と科目試験免除
マトゥラ100日前に卒業パーティー
マトゥラコーデでやる気アップ？
必須科目の問題例（英語と数学）

　全国共通の高校卒業試験は多くの国で実施されており、大学入試とも呼べるもの。ドイツではアビトゥーア、フランスではバカロレアがマトゥラと同等の試験です。ほか欧米の多くの国に同じような試験がありますが、ポーランドの場合、進学時に限らず就職時にもマトゥラの提出を求められることがあるのが特徴。そのため、進学しない生徒でも「一応受験しておかねば」となるのだとか。 また興味深いことに、結婚前の神父さんとの面談で、夫はマトゥラの結果を提出していました。カトリック教会では離婚ができないため（離婚という概念がない）、学歴関連で揉めた場合の保険なのかも？

　必ず受ける科目として国語、数学、そして外国語の3つがあります。外国語は英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、ロシア語など複数の言語から選択可能であり、9割以上は英語を選ぶのとのこと。そしてこれらに加え、もう1科目受けなければなりません。また、国語と外国語は口頭試問があります。それぞれの科目で最低3割以上を取れば合格となり、下回った場合は9月に再試験…。2020年度はおよそ9%が不合格、国語と数学の平均正答率はどちらも5.2割、英語は7.1割でした。技術学校生や専門学校生を含まない一般高校の受験者のみに絞ると、正答率はもう少しが上がります。

　必須科目はすべて基本レベルのため、希望する大学の学部や学科によっては同科目の上級レベル、副教科など他科目を受験します。選択科目は国語／数学の上級レベル、外国語のバイリンガルレベル、生物、化学、物理、歴史、地理といった科目のほか、哲学、ラテン語と古代文化、ダンス、美術もあるのだから驚き。また、40種類以上ある学問系オリンピックに入賞した生徒はその科目試験が免除されるという優遇措置があります。ちなみに、私の夫は数学の筆記試験で最高評価を得たので数学の面接試験（現在は廃止）が免除されたのだそう。資格取得による免除ではなく、外部試験の評価や成績が重要視されるのは日本と異なるところですね。

　マトゥラのおよそ100日前になると、伝統的に Studniówka（ストゥドゥニュフカ）という高校卒業パーティーが開かれます。男子はスーツ、女子はドレスを着て参加し、男女が手を取り合ってポロネーズを踊るというのがお決まり。こちらの高校生は大人っぽい（法的にも成人）ので、卒業パーティーの写真や動画を見た日本人はある意味でショックを受けるでしょう。ポロネーズはポーランドの民族舞踏として知られ、ショパンのおかげで世界的に知名度の高いリズムの曲です。1月下旬〜2月上旬辺りに行われることが多く、このパーティーが終わったら受験勉強のラストスパートへ！面白いことに、ロシアでも似たような卒業パーティーを行うのですが、踊るのはワルツだそう 笑

　卒業パーティーにはいくつかの迷信があります。最も有名なのは、女子は赤い下着を着用し、その下着を見ることができた男子には幸運が訪れるというもの。このような下着にまつわる迷信はヨーロッパあるあるです。ほか、卒業パーティーからマトゥラが終わるまでの間は髪を切らないのだとか！

　周りの人の気が散るような格好でない限り、どんな服装でマトゥラに挑んでも構いません。ただ、重要な試験なので、多少のオシャレはしてもリラックスできるカジュアル系が好ましいところ。しかし、多くの女子は黒×白ベースのマトゥラコーデで気合いを入れます。最も人気の組み合わせはフォーマルスーツ風の格好や白のシックなドレス×黒のジャケットで、膝丈10センチ以上のスカートを履く女子も珍しくありません。マトゥラ向けのコーデセットやアクセサリーも売っていたり、もはやマトゥラファッションはビジネスになっているようす…。男子はネクタイを締めてスーツで挑みます。

【数学】点A（3, -5）はABCDの頂点であり、点M（1, 3）は正方形の対角線の交点となる。 正方形のABCDの面積に等しいのはどれか。
　
A) 68
B) 136
C) 2√34
D) 8√34
　
【英語】第一希望の会社に採用されたことを前提に、次の内容を含む英作文を完成させなさい。
・この会社を選んだ理由
・面接中に良い印象を与えるために取った手順
・面接中に最も驚いたこと
・採用された内容をどう思ったか

　ザッとみたところ、数学は基本でありながらちょっとひねった方程式や図形問題が多い印象でした。数学IIとB（対数や等比数列）、さらに数学III（極限）の問題があったので、ポーランドの高校数学は日本よりカバー範囲が広いのかもしれません。英語は英検準2級相当で、日本のセンターよりやや易しいものの読解中心だと思いました。