旧約聖書とユダヤ/キリスト/イスラムを簡単に解説



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当ホームページはポーランド情報が主ですが、11月28日から12月9日の投稿分は番外編としてイスラエル旅行の記事を書いています。

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前書きを飛ばして本題へ

イスラエルは宗教だけでなく、今やバックパッカー定番の地でもあります。

バックパッカーだけでなくとも、ある程度の海外個人旅行を経験している人なら訪れる人もいるでしょう。イスラエルという国自体がミステリアスな感じで興味をそそれらるのかもしれません。

私は、エルサレムを観光する前にたくさんの個人ブログを読みました。

しかし、読んで「ほおー」っとなった記事は、個人ブログでは何ひとつと見つけられませんでした。当然です。それは宗教についての理解が足りないから。

こんなに宗教に深く結びつきのある国だというのに肝心の宗教に関してはほとんど言及しておらず、「ここでイエスが十字架にはりつけられた」というような、客観的な表現が目立っていました。

信者からみたイスラエルとは

信者からみたイスラエルとは?

こういう風に言うと上から目線ですが、見下しているわけではありません。

旅行前にいきなりキリスト教やユダヤ教を学んでも、いくらウィキペディアの項目をぜんぶ読んだとしても、その人が信者でない限り、イスラエルで巡礼者のような深い感想は抱かないでしょう。

それはそれで良いと思うんです。

私だって熱心なイスラム教徒がいる国にたくさん行ってきましたが、この宗教については結局よく理解できていません。

宗教を見つめ直す機会

宗教を見つめ直す機会

しかし、無宗教だったり「信者でない」という観点だからこそ抱く感情もあるわけです。そこにも価値があります。

ただ、日本人が書くイスラエル旅行に関してのブログの場合、信者ではない人の目線からの記事は山ほどあることを考えると、当記事のような信者が書くブログは貴重なのではないでしょうか。

私は学生時代ですでに35ヵ国ほど旅をしていましたが、その時はカトリックではありませんでした。だから、カトリックになってからここに来れたことは本当に良かったと思っています。

イスラエルへ行く前に、当記事を読まれる方が一人でも多いことを願います。

 

3宗教=アブラハムの宗教

宗教への理解を深めましょう

宗教への理解を深めましょう

3宗教について

イスラエル、特にエルサレムでの観光のようすをブログでお伝えする前に、3宗教について私なりに解説します。

意外と知られていませんが、キリスト教、イスラム教、ユダヤ教、この3つの宗教は、まったく別の宗教に見えて原点は同じところにあり、共通の神を持つということをご存知でしょうか。

そして、これらはまとめて「アブラハムの宗教」とも呼ばれます。

聖書を読んだことがない人も「ノアの方舟」や「バベルの塔」といった伝説の名を一度は聞いたことがありますよね。

アブラハムはそれらの物語のあとに登場する、1番最初に神のお告げを聞いたとされる人物です。イスラエル民族の祖であり、イスラム教ではアラブ族の祖と言い伝えられる、非常に重要な存在。

アブラハムの宗教は、旧約聖書の内容に触れずして語ることはできません。

旧約聖書には様々なことが記されていますが、一部を挙げると「人々を救う救世主が必ず現れる」と書かれています。

かんたんに言えばその原点からブレていないのがユダヤ教、ユダヤ教徒からでたイエス・キリストを救世主だと信じているのがキリスト教、しかしその神を救世主と認めずムハンマドという預言者の教えに従っているのがイスラム教です。

ここで話を難しくしているのが、イエス・キリストとムハンマドの登場。

しかしまず、旧約聖書というのが何であるのかを理解していなければ基本的なところが「?」のままでしょう。旧約聖書とは、いったい何なのか。

そこで、下記に詳しくまとめました。

 

旧約聖書とは

聖書の約7.5割を占める旧約聖書

聖書の約7.5割を占める旧約聖書

旧約聖書は、紀元前12世紀からイエス・キリストが誕生する400年前の間にかけて、ヘブライ人(古代イスラエル人)によってヘブライ語あるいは一部アラム語でまとめられた書物です。

現在の旧約聖書は全39巻から成っており、これらは「律法(モーセ五書)」「歴史書」「詩歌書」「預言書」の大きく4つに分類することができます(新約聖書と合わせると全66巻)。
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律法 は、最初の「創世記」「出エジプト記」「レビ記」「民数記」「申命記」を指し、これらは伝統的にモーセが書いたと考えられていました。現在は、これらすべてがモーセによって書かれたわけではないことが分かっています。

モーセは前13世紀頃の預言者であり、イスラエル民族の指導者でした。

モーセは、神の啓示によりイスラエル民族を率いてエジプトを脱出し、唯一絶対の神ヤハウェとの契約により「十戒」を与えられます(モーセの十戒)。

律法という言葉は、新約聖書(キリスト教のみの正典)にも度々登場する言葉であり、イエス・キリストは律法についての正しい理解の仕方を人々に教えていま した。また、ユダヤ教徒は、モーセ五書(律法)を現在に至っても文字通りに守る人々であり、ユダヤ教とキリスト教の理解にはまず、モーセ五書を読んでおく必要があるいえるでしょう。

モーセの十戒

十戒の内容は神の意思が記されたものであり、モーセが十戒そのものを考えだしたわけではありません。

    1. 私のほかに神があってはならない
    2. あなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない
    3. 主の日(ユダヤ教では安息日)を心にとどめ、これを聖とせよ
    4. あなたの父母を敬え
    5. 殺してはならない
    6. 姦淫してはならない
    7. 盗んではならない
    8. 隣人に関して偽証してはならない
    9. 隣人の妻を欲してはならない
    10. 隣人の財産を欲してはならない

※カトリック教会の場合

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歴史書 というのは、「申命記」の次の「ヨシュア記」から「エステル記」までの14巻を指し、これらはモーセのように士師がイスラエルの指導者として活躍した時代を描いたものです。

前1000年頃に成立したヘブライ王国はダビデ王とソロモン王の栄華を極めますが、ソロモン王死後の前926年に王国は北部と南部に独立します。この時に北部はイスラエル王国(北王国)、南部はユダ王国(南王国)となりました。

この分裂は、南部のユダヤ族がダビデ王とソロモン王の統治に不満を抱いたことによって生じたものです。

その後は神の教えに背く王が続き、神は怒りを示すようになりました。

そこで何が起こったかというと、北王国と南王国の消滅です。前8世紀の終わり頃、北王国はアッシリアに滅ぼされ、南王国はバビロンに滅ぼされました。南王国の民はバビロンに補因として2回にわたって連行され、新バビロニア王国に移住させられます(バビロン捕囚)。

しかし、70年後に新バビロニア王国はペルシア帝国によって滅ぼされてしまったため、捕囚民は南王国のあったエルサレムの地に帰還しました。

この捕囚の歴史は「列王記」「歴代誌」「エズラ記」「ネへミヤ記」に記されており、ペルシャ時代については最後の「エステル記」に記されています。

ここがユダヤ教のはじまり

バビロン捕囚というのは、ユダヤ教という宗教が成立するに至った大きな契機となりました。この捕囚によって、ユダヤ人はユダヤ人としての民族意識を持つようになり、ユダヤ教という宗教が確立します。ユダヤ教の教えは、このバビロン捕囚時のバビロニア文化の影響をかなり受けているのです。

捕囚されたユダヤ人は失った国(南王国)と神殿の代わりに律法を心の拠り所とするようになり、それが現在の正統派ユダヤ教徒に見られるような律法を重んじる宗教となりました。そして、神ヤハウェはユダヤ民族の神であるだけでなく、世界を創造した唯一神として理解されるようになります。

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詩歌書 は、150編から成る知恵と愛の詩です。「ヨブ記」「詩編」「箴言(しんげん)」「コヘレト」「雅歌」の5巻からなり、特にヨブ記は旧約聖書の最も劇的な書の一つとされます。

ヨブ記が書かれたのは、実は旧約聖書の一番最初にある「創世記」(律法)よりも前だと言われています。この書は、ヨブとその友人の対話形式による長い詩でテーマは「神が与える苦しみ」。最も、最後の「雅詩」は愛の詩であり、神と人間の相互愛を見ることができます。

無宗教者や無神論者がこの詩歌書を読むと嫌気がさすかもしれませんが、3宗教にとっての神の存在がどれだけ揺るぎないものか伝わってくるでしょう。もしかしたら、あまりの愛の深さや信仰のあつさに引いてしまうかもしれません。
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預言書 は旧約聖書の最後を締めくくる「イザヤ書」「エレミヤ書」「哀歌」「エゼキエル書」「ダニエル書」の5つの大予言書と、「ホセア書」から「マラキ書」の12の小預言書から成ります。

大預言書と小預言書というのはそれぞれの文量の多さを指しており、預言の重要度にはなんら変わりません。

これらは預言者の説教の集大成であり、預言とは神の言葉を語ったものを言います。つまり、預言者とは預言するために神によって選ばれた人々のことです。

予言と預言を混同してはいけません。

預言には未来の出来事への暗示も数多く含まれており、例えばその一つがキリスト教にとってのイエス・キリストの誕生です。こういった、未来の出来事が事実となったものについては、新約聖書では「成就した」と表されています。

しかし、預言書というのは予言書ではなく神から授かった言葉の書ということを理解しておきましょう。唯一の神の教えを理解するために預言書は超重要です。

 

概要はこれで掴めたでしょうか

概要はこれで掴めたでしょうか

旧約聖書の内容などこれっぽちも知らないという方にも分かりやすく解説したつもりですが、いかがでしょうか。

ところで、旧約聖書という言葉はキリスト教徒の観点から来ています。

ユダヤ教では旧約のことを「律法(トーラー)」とか「預言者(ネビイーム)」と言います。ユダヤ教徒はイエス・キリストを救世主としても預言者としても認めず、偽預言者扱いです。イエスの誕生以降の書物が新約なので、そもそも旧約とか新約といった考えはありません。

イスラム教では旧約と新約の一部を尊重しますが、一番大切なのは、預言者ムハンマドやムハンマドの後継者が編集したコーランという書物です。

ユダヤ教徒がムハンマドを認めていないのは当然のこと、キリスト教徒にとってのムハンマドは偽預言者です。そして、イスラム教徒はムハンマドを最後の預言者として信じているので、ユダヤ教徒やキリスト教徒はイスラム教に改宗すべきだと思っていることでしょう。

キリスト教徒としてコメントさせてもらうと、ユダヤ教徒に理解は多少示せてもイスラム教はもうまったく別の宗教といった感じです。それなのに同じ神を信じている、不思議ですね。

コーランの中身を知れば知るほど、ムハンマドの妄想に聞こえてなりません。

現に、イスラム教というのはアラブ人のための民族宗教という一面があったのではないかと言われており、聖母マリアのことを勘違いで「アロンの姉」としてしまったり、お祈りも最初はエルサレムの方向を向いて礼拝していましたが、ユダヤ人との争いが激化したという理由だけで向きを変えてしまいました。

イスラム教に関しては、次から次へとあら探しができてしまいます。

しかし、だからといってイスラム教徒を否定しているわけではないので、カッとしないでくださいね。あちらも「なにがイエス・キリストは救世主だ!」という感じでしょうからお互い様です。

 

3つの宗教の特徴

信仰の父、アブラハム

信仰の父、アブラハム

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教とはどういった宗教なのか、できるだけ分かりやすく解説していきます。

ユダヤ教から派生したキリスト教と、キリスト教に影響を受けたイスラム教の違いがハッキリ見えてくるはずです。
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Q1. それぞれの宗教の起源は?

ユダヤ教……紀元前2000年頃、最初の預言者アブラハムが神のお告げを受け、祝福されたことから始まる。バビロン捕囚によってユダヤ人という民族意識が急激に高まり、ユダヤ教という宗教が確立された。
キリスト教…旧約の数々の預言が成就され、救世主として現れたのがイエス・キリストだと信じている。ユダヤ教徒から出たイエス・キリスは数々の奇跡や業を行うことで神の子であると証明した。
イスラム教…イエスが誕生した700年後に現れた、預言者ムハンマドによって創始された宗教。イエスは救世主ではなく預言者であり、我こそが最後の預言者だと主張した。


Q2. それぞれの宗教の経典は?

ユダヤ教……キリスト教でいう旧約(トーラー)と、タムルードやミドラシュと呼ばれるトーラーの註釈書。しかし、タムルードの内容があまりにも差別的なため、タムルードを認めない教派もある。
キリスト教…旧約とイエスが誕生した後にまとめられた新約の両方を経典としている。
イスラム教…旧約と新約の一部を経典として取り入れているが、最も大切なのはムハンマドを通じてまとめられたコーランである。


Q3. それぞれの信仰の特徴は?

ユダヤ教……信仰や教義以上に、その前提として行為・行動・実践を重要視している。極端な例でいうと、安息日には電気のスイッチを押すことすらしない教派が存在する。
キリスト教…罪を犯した者を徹底的に裁くのが神であるが、神を信仰し愛していれば、神も人々を赦し無償の愛を与えてくれる(天国に導いてくれる)と信じている。
イスラム教…キリスト教の影響を受けているが、司祭や司教といった聖職者は存在しない。聖なるものは唯一の神アッラーであり、アッラーの前では皆平等と考える。


Q4. 同一の神の呼び方は?

ユダヤ教……唯一神ヤハウェ
キリスト教…唯一神ヤハウェとは言うが、日常的にはゴッド(神)や父と表すことの方が多い。
イスラム教…唯一神アッラー


Q5. それぞれの信者の数は? 

ユダヤ教……1500万人
キリスト教…21〜22億人
イスラム教…15〜16億人


Q6. 3宗教の主な聖地は?

ユダヤ教……ユダ王国の首都エルサレムにあったヘロデ神殿の西側の壁である「嘆きの壁」。
キリスト教…イエスが十字架にはりつけられたゴルゴダの丘に建てられた「聖墳墓教会」。
イスラム教…預言者ムハンマドが一夜のうちに昇天する旅を体験したといわれる「岩のドーム」。


Q7. どこで祈りを捧げるか? 

ユダヤ教……シナゴーグ
キリスト教…教会
イスラム教…モスク
※3宗教ともどこでも祈りを捧げることはできますが、ここでいう場所は3宗教の会堂です。


Q8. 改宗したらどうなる?

ユダヤ教……去る者追わず
キリスト教…去る者追わず
イスラム教…イスラム法上、死刑

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やっぱり宗教って複雑!

やっぱり宗教って複雑!

以上、私なりのまとめです。

宗教というのは特に無宗教といわれる日本人にとっては怪しい響きだったり、理解し難いものでもありますよね。

私の身近にも「宗教なんて嫌い」と言っている人が結構います。

信者の目線でいえば、誰がどの神を信じようが信じまいが勝手ですし、誰がどれだけ宗教を忌み嫌おうが、私は神を信じることに希望を見出しているのでそれに関して口を挟んでほしくはありません。

単純に言えば自分がよければそれでいい一方、もし大切な人が自分と同じ信仰を持つのであればとても嬉しいです。

ただ、宗教が原因で戦争が生まれているのは事実であり、これが根本的原因で宗教を嫌っている人が多いです。しかし人々による無差別な迫害や殺し合いなどは神が望むことではないでしょう。

戦争は、人によって起きます。

理由は必ずしも宗教の対立とは限りません。政治や経済で揉めていても宗教を理由に人を傷つけることがあります。

では、宗教がなければ幸せなのか?と問われれば、どうでしょう。

宗教を拠り所として幸せを感じる人もいますし、死の別れも宗教があるからこそ乗り越えられたりします。宗教に命を奪われる人もいる一方、救われたという人もまた数えきれないほどいるのです。

イスラエルに訪れるということは、こうやって改めて宗教の存在意義を確かめる機会にもなります。ただ興味があるから、漠然とした理由でこの地に足を踏み入れるのはもったいない。イスラエルは旅のステータスではありません。

当記事を読んだ方が少しでも宗教に理解を示してもらえたのであれば、この長い記事を書いた甲斐があります。

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なぜキリスト教徒はイエスを信じるのか 前編

2015.10.30
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今日のポーランド語

chrześcijanin (-anka)

chrześcijanin(フジェシチヤニン)は「(男性の)キリスト教徒」、chrześcijanka(フジェシチヤンカ)は「(女性の)キリスト教徒」という意味です。

しかし、カトリック教徒の場合は同じキリスト教徒でも特にプロテスタントと区別して katolik(男性)/katoliczka(女性)と表すことが多いです。「私はカトリック教徒(女性)です」という場合、 “Jestem katoliczką”(イェステム  カトリチュコン)と言います。職業や地位など、属性を表す場合は名詞が造格になることを忘れないようにしましょう。

 

最後までお読み頂きありがとうございます☆
あやか
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2 件のコメント

  • 北島 公彦 より:

    これは素晴らしい記事です。また後でじっくり読み直してみます。音楽をやっていて、宗教観無しに佳き演奏をするのは無理です。学生達にも大いに勧められるページです。ご執筆ありがとうございました!

    • Ayaka より:

      北島さん
      ありがとうございます!(*^^*)
      そういえば、夏にマスタークラスでピアノのレッスンに来られたお嬢さんのお母様も同じことを仰っていました。
      思わぬところで当記事がお役に立てて何よりです。
      新約聖書についても少しまとめましたので、またお時間のあるときに読んでいただけると嬉しいです。
      http://witam-pl.com/2016/12/01/blog268/

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