これからポーランドへ行く方が知っておきたい情報

第7回 黄金時代の幕開け ルブリンってどんな街?

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クラクフ市公認ガイドのカスプシュイック綾香(本名)です。2014年以降、ポーランド在住。ガイド・通訳業の傍ら、旅行や生活に欠かせないポーランド情報をお届け中!
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こちらは、個人的に観光客の皆さんにお勧めしたいポーランドの魅力的な都市を紹介していくコーナーです。
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第7回は、中世ポーランドの歴史を大きく動かしたルブリンです。

ルブリンはガイドブックですごく推されているわけではないのですが、本当におすすめです。こじんまりと栄えた街でポーランド人との距離も近く感じられ、中世そのままの街並も綺麗です。

Flickr by Adam Smok
Lublin : flickr by Adam Smok

 

このページの目次
1. ルブリンの位置
2. ルブリンの歴史
3. どんな街?
4. 市内の交通・料金
5. 市内へのアクセス
6. 主な観光スポット
7. ルブリンの関連記事

 

ルブリンの位置

ルブリン/Lublin はポーランド東部に位置するルブリン県/ Województwo luberskie の県都。

東ポーランド最大の都市であり、ワルシャワから南へ170キロ、クラクフから北東へ250キロの位置にあります。

ワルシャワからは直行列車で約2時間20分ですが、クラクフからはなんと4〜5時間の距離です。2016年現在、クラクフからルブリンへの列車は乗り換えが発生する場合が多いので、ワルシャワからの日帰りが最も良いでしょう。

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ルブリンの歴史

チェフフというルブリンから約200キロ離れた街でアラビア硬貨が発見され、9世紀は既に商業ルートとして栄えていたことが分かったルブリン。

その歴史はポーランド建国以前の9世紀後半にさかのぼることができます。

10〜11世紀には丘にあるチュファルテク地区が商業の中心地として栄え、12世紀には東からの攻撃に備えて街は頑丈に造りかえられました。ルブリンの名前が文献に出てくるのもこの頃です。

モンゴルの侵攻があった後の13世紀半ばには城が建設され、そのレンガで組み立てられた強固な箇所は今でも確認することができるほど。同時にいくつかの教会も建設され、これを機会に街の人口はどんどん増えていきました。

1392年、新王朝が成立したポーランドで、ヴワディスワフ2世(ヤギェウォ朝の最初の王)はこの街を重要視し、商業の街として特別な特権を与えます。それは、後に結ばれることになるリトアニアとポーランドの連合国がより栄えるためであり、そのおかげで15〜6世紀にルブリンは急速に発展を遂げました。

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また16世紀、この地では何度か国会が開かれており、政治的にも重要な場所と化していたことが分かります。

ルブリン合同 painted by Jan Matejko
ルブリン合同 painted by Jan Matejko

そしてついに1569年6月26日、ポーランドの歴史を大きく動かしたルブリン合同の調印がルブリン城で行われ、晴れてポーランドは連合国からの大きな一歩を踏み出すことになりました。ポーランド・リトアニア共和国、ポーランド史上最大の黄金時代の幕開けです。

しかし、1795年の第三回ポーランド分割の結果オーストリア領となり、最終的には1815年から100年間、ロシア支配下のポーランド領に。

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ただ悪いことばかりではなく、この間のルブリンは工業の発展が進み、人口も約25年の間に2倍近くの5万人へと膨れあがりました。やがてポーランド初の航空機製造工場や企業も設立され、街は著しく成長を遂げます。

第二次世界大戦の勃発までは…。

ルブリンは戦前、人口の40%がユダヤ人を占めていたこともあり、ナチス・ドイツの政権下ではドイツからの徹底的な迫害を受けることなりました。ゲットー建設後はそこに移住させられるも、大半はベウジェツ強制収容所やマイダネク強制収容所で殺害されています。

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こうした悲劇がありながらも、今日のルブリンは、戦時中の街の破壊は免れたため中世の美しい姿を保つ観光都市となりました。多くの人々で賑わう街には、悲しい過去の面影はもうありません。

しかし、もし皆さんがここに訪れるのであれば、過去の忌まわしき歴史にもきちんと向き合ってほしいと思います。

 

どんな街?

ルブリンはルネッサンスの街、まるでポーランドのイタリアです!

ルブリン城に背を向けて
ルブリン城に背を向けて

街のシンボルでもあるルブリン城は旧市街と橋で繋がれていて、それがまず私にとって新鮮に感じられました。ポーランドの色んな街に行きましたが、たいてい城と旧市街は道で繋がっています。

そして旧市街への門(写真にある黄色い門)をくぐると、やっぱりこれまで訪れてきた街とは雰囲気が違うんですね。

まず、クラクフやワルシャワ、ヴロツワフなどは昔から大都市であり、ルブリンは小さな街だったので当然といえば当然です。ただこの街には立派な城があり、旧市街への大きな門もいくつかあり、単なる小さな街とは思えません。

メインストリートは狭い商店街のよう
門をくぐった先は狭い商店街のよう

旧市街は狭く、建物はギュッと詰まったように建っています。見どころは城や一部の教会を除けば、そこまで多くありません。どちらかと言えば、歩きながら雰囲気を楽しみ、ちょと疲れたらカフェをしたり…、そんなのんびりしたスタイルで旅をしたい人におすすめ。

しかし、ここに滞在するのであれば最低でも2泊はすべきでしょう。

列車で2時間弱の距離にはザモシチという世界遺産の街やカジミエシュ・ドルヌィがありますし、またマイダネク強制収容所もルブリン近郊にあり、できればそれらも同時に訪れてほしいからです。

パブ Św. Michał にて頂きました
Św. Michał というパブにて

こちらはルブリンご当地グルメ!

ルヴリン風フォルシュマクのスープと、元はユダヤ人が作って食べていたツェブラシュという丸いパンです。

スープは肉とトマト、きゅうりが入っていて、少し油っこいもののポーランド人の夫にとっては病みつきになるような味でした。私にとっては、まあまあかな?

ルブリンは夜の街歩きにもピッタリ。旧市街は小高い丘にあるので他の街にはない風景を楽しむことができ、また中央広場の近くにある中世の遺跡も夜に行くとどことなくロマンチックです。

おしゃれなカフェやバーがたくさん
おしゃれなカフェやバーがたくさん

外国人観光客はあまりおらず、地元の人ばかりだというのに「凝っているなぁ」と感じる場所も所々見られました。

門には動く文字がライトで浮かび上がっていたり、タイのロールアイスの実演で人だかりが出来ていたり、中央広場周辺の古い建物の窓には昔の人々の絵が貼られていたり、夜はずっと賑やかにライトアップされた派手な建物があったりと、まあ、いくらでもポーランドでは珍しいと思えるものがありました。

ほどよく栄えて、ワルシャワからもそんなに遠くないのに外国人観光客はほとんどいない。でもそこが、かえって穴場と言えるのかもしれませんね。

ワルシャワやクラクフとは異なる印象を持つ街ですが、実はこのルブリンこそが典型的なポーランドの街の姿だそう。ルブリンだけなら1日で観光できるので、ワルシャワからの日帰りスポットとして訪れてみてはいかがでしょうか。

 

市内の交通・料金

ルブリンの公共交通機関は主にバス/トローリーバスとなります。

旧市街や新市街など中心部の観光スポットはすべて徒歩圏内ですが、ルブリン駅から旧市街へは4キロ近くあるのでバスで移動するといいでしょう。

またルブリンには丘が多いので、短距離でも疲れやすいと感じられるかもしれません。ホテルはなるべく旧市街周辺にしておくことをおすすめします。

有効時間 料金(PLN)
30分間有効 3.20
60分間有効 3.60
2時間有効
12時間有効
5日間有効 30

※2016年9月現在

チケットはゾーン制で上記はゾーン1の料金です。35番はゾーン2、5/55/N2は部分的にゾーン2となり、それ以外はゾーン1となります。

また、ドライバーから直接チケットを購入する場合は4PLNとなります。

参考:MPK公式ホームページ

 

市内へのアクセス

空港: シフィドニクという町にルブリン空港があります。ルフトハンザの他、格安航空会社 Wizz Air や Ryanair が就航。空港とルブリン駅は1本の列車で行くことができるのでアクセスは良好です。

列車:ポーランド各都市からルブリンへ行く列車がありますが、速度は遅く頻繁に走っているわけではありません。クラクフでは2016年現在1日1本しか直行列車がないため、通常は乗り換えが発生して約5〜6時間もかかってしまいます。ワルシャワからであれば2時間毎にルブリン行きの列車があります。

ワルシャワの駅
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ワルシャワからルブリンへの行き方は、下の記事の 3.マイダネクへの行き方 -ワルシャワからルブリンへ- に詳しく書いています。参考にしてください。
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バス:バスターミナルはルブリン城の近くにあり、旧市街へは徒歩11分です。所要時間は5時間前後となりますが、クラクフ方面から行く場合は Polski bus を利用した方がいいでしょう。

※2016年9月現在


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主な観光スポット

ルブリンは1日で十分見どころを周ることのできるコンパクトな街です。
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ルブリン城
ルブリン城の外観

ルブリン城(Zamek w Lublinie)HP
14世紀にゴシック様式で建造され、19世紀にネオゴシック様式に改築された城。1569年にルブリン合同の調印(歴史の項目参照)が行われた場所として有名です。第2次世界大戦中、城にある塔は、ナチス・ドイツにより政治犯を収容する牢獄として使われていました。城内は17〜19世紀にかけてのポーランド絵画や家具、調度品を見ることができ、中でもヤン・マテイコ(19世紀、ポーランドの歴史画や国王の肖像画を描いた画家)の作品は必見です。

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三位一体の礼拝堂(Kaplica Trójcy Świętej)
ルブリン城内にある礼拝堂。城の中で最も神聖な場所です。チケットは1日枚数限定で時間限定の公開なので早めにチケットを購入するか、前日にチケットオフィスで予約してください。礼拝堂は1326年から存在しており、壁画は1418年に遡るもの。ポーランドで見ることのできる中世のフレスコ画は、ここが最も素晴らしいと言われています。

クラクフ門(Brama  Krakowska)
14世紀にゴシック様式で建てられ、後に部分的にバロッ様式に建て替えられたルブリンのシンボル。当時のポーランド王国の首都であったクラクフの方角に向いているということでクラクフ門と名付けられました。門にある時計は16世紀に設置されたものです。正午になるとクラクフの聖マリア教会のように、ヘイナウと呼ばれるメロディーがトランペットの演奏で時報として流れます。門の横にはルブリン歴史博物館があります。

フォルトゥナの地下室(Piwnica pod Fortuną)HP
旧市街中央広場の地下にある博物館。入り口は中央広場の南側にあり、この博物館で見られる地下室は16〜17世紀に造られたものです。現在、観光ルートとして公開されている地下通路の長さは250mで、合計10の地下室をガイドと見学することができます。天井に描かれている絵はルネッサンス時代の風習や神話の物語など。また、ルブリンの歴史もモダンな展示方法で紹介しています。

スカンセンルブリン村博物館(Muzeum Wsi Lubelskiej)HP
ルブリン郊外にある、約200年前の農村を再現した野外博物館。ルブリン村に住んでいた人々の家や生活のようすを見ることができ、馬やヤギ、ニワトリやアヒルなどの動物もいます。そこに実際に暮らしていたユダヤ人家族の家、木造教会や墓地、人工池まであり、野外博物館の中でもかなり本格的。2016年8月末に訪れた時は展示物としての新たな町が建設中でした。とても広いので、ここだけで半日は過ごせてしまいそうです。

マイダネク強制収容所博物館(Państwowe Muzeum na Majdanku)
以下の記事をご覧ください。

ポーランドの移民事情2021

 

ルブリンの関連記事

ルブリンについては以下の関連記事もぜひご覧ください。

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あやか
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