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ポーランドの“振り子民主主義”とは?共産主義崩壊から2025年大統領選まで総まとめ

ポーランドの大統領選挙
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クラクフ市公認観光ガイドの綾香です。旅行や生活に欠かせないポーランド情報を発信中! 2025年、東アフリカ・ルワンダでの教育支援に向けて【財団法人MOST】を設立。興味のある方はご連絡ください
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 長らく直接的な政治の話題はあまりブログに書かなかったんですが、今年、ポーランドの大統領が10年ぶりに変わるということで、日本のニュースでもチラッと取り上げられるはず。
今回もリベラル派と保守派の熱い闘いになっており、私個人の予想ではまた保守派が勝つかと思うのですが、かなりいい勝負になっています

うちの夫
ポーランドはリベラル派と保守派が半々くらいでほぼ拮抗してるよ。
あやか
うちの周りは保守派が多いけど、ほんと、きれいに二極化してるね。
ポーランドの歴史
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ポーランドの政治的背景

 1989年の共産主義崩壊以降、ポーランドは民主化と市場経済への移行を経て、1990〜2000年代前半にはEU加盟を目指す中道・リベラル寄りの政権と政治的混乱が続きました(2004年にEU加盟)。そして2005年以降は、保守政党「法と正義(PiS)」が台頭。特に2015年からの約8年間は、司法・メディアの改革や伝統的価値観を前面に打ち出した強い保守政治が続きました。
 2023年の総選挙ではリベラル勢力が政権に返り咲き、現在は保守とリベラルがほぼ拮抗している状況です。社会全体も東西・都市農村・世代間で深く分断されており、「二極化した民主主義」としての様相を深めていくポーランド…。果たして、これからの政治体制はどう動くのでしょうか。

保守派とリベラル派

1. 1989年以降のポーランドの政治体制

1989年〜1990年代前半
共産体制の崩壊と民主化の出発点
1989年、反体制労組「連帯」の合法化と円卓会議を経て部分自由選挙が実施され、共産党政権が事実上崩壊。マゾヴィエツキ政権の下で民主化が本格化し、ポーランドは社会主義から自由主義国家への大転換を迎えた。東欧全体の民主化ドミノの先駆けともなり、冷戦終焉の象徴的出来事とも言える。
 
1990年代
自由と混乱が交錯する時代
1990年、大統領にレフ・ワレサが就任し、本格的に民主主義体制へ移行。しかし、多党制と市場経済の急速な導入は混乱を招き、失業や格差が社会問題となった。政党も乱立し、政治的安定に欠ける時期が続く。1995年にアレクサンデル・クファシニェフスキが大統領に就任すると、中道左派による穏健な統治が始まり、政治は次第に安定した。
 
2000年代前半
EU加盟と西欧化のピーク
2004年、長年の悲願だったEU加盟を実現。
経済成長や国際的信用の向上、若者の海外進出などポジティブな変化が相次ぐ。都市部・若者中心にリベラルな志向が強まり、市民プラットフォームなど欧州志向の政党が影響力を増す。一方で、伝統や宗教、保守的価値観を重視する声も根強く、保守勢力の再浮上の土壌も徐々に整っていった。
 
2005年以降
保守の時代と国家主義の台頭
2005年、保守政党「法と正義(PiS)」が政権を握り、宗教、家族、主権といった伝統的価値観を前面に出す保守政治が台頭。特に地方や高齢層を中心に強い支持を得た。2015年以降は大統領職と議会多数をPiSが掌握し、司法制度やメディアへの統制を強化。移民の受け入れにも厳しい姿勢を取り、EUと対立する場面が増えた。←やや偏向報道

レイシストと言われても国を守る理由

 
2020年以降
二極化する社会と振り子の民主主義
2020年の大統領選では、アンジェイ・ドゥダ氏が僅差で再選を果たした。保守優勢が続く中、都市と地方、若年層と高齢層の間で政治的な分断が深まっていっている。2023年の総選挙では、中道リベラル派が政権交代を実現。2025年の大統領選では、ワルシャワ市長のトシャスコフスキ氏と保守派のナヴロツキ氏が接戦を繰り広げており、ポーランドは再び大きな分岐点に立たされている。
 
2025年5月現在
大統領選挙の結果待ち
 
ポーランド経済
ポーランドがシリア難民を受け入れない理由
ポーランドが共産主義だった頃の話
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2. ドゥダ政権 2015〜2025

アンジェイ・ドゥダ

 2015年にアンジェイ・ドゥダ氏が大統領に就任して以来、ポーランドは大きく政治の潮流を変えることとなりました。彼を支える保守政党「法と正義(PiS)」は、同年の議会選挙でも勝利し、政権を掌握。宗教や家族、伝統的価値観を重視する保守的な政策を本格的に進めるようになります。
 一方で、司法制度の改革やメディアへの影響力強化、LGBTに否定的な立場などは国内外でも大きな議論を呼び、特にEUとの対立が深まる要因となりました。EUからは「法の支配」の原則に反するとして、補助金停止や制裁の動きも見られましたが、PiS政権はあくまで「国家主権の防衛」であると主張しています。また、子育て支援などの社会保障を拡充し、地方や高齢層を中心に根強い支持も確保してきました。しかし、都市部や若者を中心としたリベラル層との分断は深まり、社会全体が大きく二極化していきます。2020年の大統領選ではドゥダ氏が再選しましたが、得票率は約51%と極めて接戦。2023年にはリベラル派が議会で過半数を取り、政権交代が実現しました。ポーランドの政治は現在、選挙ごとに保守とリベラルの間を揺れ動き、国家の方向性が大きく変化しやすい状況にあります。

あやか
とは言っても、他国にゴマをすらずに自国を守る姿勢は好感持てる。
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3. 自国を守る姿勢が支持を集める理由

ポーランドの歴史

 ポーランドの保守政権が掲げる「他国に迎合せず、自国を守る」という姿勢は、多くの国民にとって誇りと安心感をもたらす要素となっています。ポーランドは18〜20世紀にかけて他国による分割や占領を幾度も経験してきた歴史があり、その記憶から「外圧に屈しない姿勢」は、主権国家としての強さの象徴と見なされる傾向が高いのです。
 特に、2015年以降の法と正義(PiS)政権は、EU からの圧力に対しても強硬な姿勢を貫いてきました。司法改革や移民政策をめぐるEUとの対立も、「外部からの干渉への抵抗」として受け取られ、地方部や高齢層など保守的な層を中心に大きな共感を呼んでいます。このような姿勢は、「外に媚びず、信念を貫く国家」として好感を持たれ、国民の精神的な支えにもなってきました。一方で、リベラル層からは「孤立主義」や「国際的な信頼の低下」といった批判も根強く、国内における価値観の対立を深める要因ともなっています。それでも、自国の文化や価値を守り抜こうとする強い姿勢は、現代のポーランド政治において重要な支持基盤の一つです。

戦後の損害賠償

▲ 保守派が当選したら賠償請求もまた動きそう

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4. 次の大統領選決選、どうなる?

大統領選挙

 2025年5月18日に行われたポーランド大統領選挙の第1回投票では、ラファウ・トシャスコフスキ氏(リベラル派)が31.4%、カロル・ナヴロツキ氏(保守派)が29.5%を獲得し、いずれも過半数に届かなかったため、6月1日に決選投票が実施されることになりました。今回の投票率は67.3%と高く、国民の政治的関心の高さがうかがえます。
 特に注目されるのは、極右系候補が合計で21%超の票を得たことで、その支持層が次の決選でどちらに流れるかが勝敗を大きく左右する見込み。ナヴロツキ氏は国家主義的な立場で右派票の取り込みを狙い、一方でトシャスコフスキ氏は都市部や若者、穏健中道層への支持拡大に力を入れています。今回の大統領選は、単なる人物選びではなく、司法制度改革やEUとの関係、民主主義の在り方を巡る国民の価値観が問われる選挙でもあります。保守とリベラルが拮抗する中、ポーランドは社会の分断を抱えながら、新たな進路を選ぼうとしているのです。

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 ポーランドの大統領は、国民による直接選挙で選出され、任期は5年。再選は一度のみ認められており、最大で10年間の在任が可能です。選挙は2回投票制(決選投票制)を採用しており、1回目の投票で過半数(50%超)を得票する候補がいなかった場合、上位2名による決選投票が行われます。

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ちょっと、つぶやいていい?
アイコン 私はポーランドの永住権を持っているとはいえ、日本国籍のままなのでこの国での選挙権はありません(ポーランド国籍に変えることもできるけど、変えません)。共産主義崩壊から30余年、国民が選ぶ一票は、単なる政権交代ではなく、国の価値観や未来のかたちを左右する重みを持っています
ポーランドの歴史

 

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あやか
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