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去年から重力研究ばかりやっているからか、寝ても覚めても重力が頭から離れません。
今回は小難しい数式は挟まず、物理学者が追い求めている究極の目標「万物の理論」の最後のピースとなる「重力」について語ろうと思います。
日常のふとしたところで未知の世界に入り込んでしまうことが多くて、本質的な意味で昔から死を身近に感じて生きてますが、こればかりはこの先、何十年と考えてても飽きないだろう。
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Theory of Everything
万物の理論
頭に思い浮かべるだけでご飯が何杯でも食べれそうなくらい、ワクワクするワード。
これは、宇宙に存在する【すべての力と物質のふるまい】をたったひとつの理論で説明することを目指す、物理学の最終目標と言えるものです。
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❶ 重力(質量を持つもの同士を引きつける力)
❷ 電磁気力(電気や磁石の力、光もこの仲間)
❸ 強い力(原子核の中で核子をくっつける力)
❹ 弱い力(放射性崩壊などで働く力)
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このうち、重力は他の3つの力との統一がかなり難しそうだというのが大きな課題。
電磁気力・強い力・弱い力の3つは、量子力学と相対性理論の枠組みの中で比較的うまく扱えるのですが、重力はアインシュタインの一般相対性理論という古典的な理論で記述されており、量子力学と相容れないという大きな問題があります。
天才アインシュタインは量子力学に偉大な貢献を果たした存在にも関わらず、自身は量子力学に対して終生懐疑的な立場だったこともあり、そのために整合的に記述ができなかったのです…。
電磁気力 + 弱い力は「電弱理論」としてすでに統一済み、電弱力 + 強い力は「大統一理論」として提案中の段階(証明には至ってない)。
電弱力 + 強い力が統合されれば「大統一理論」の完成で、あとは「万物の理論」を目指すのみ。
ふかふかのベッドに、ピンとシーツを張ったみたいな世界を思い浮かべみてください。そのシーツの上にボウリングの球を置くと、シーツが凹みますよね? それがまさに、「時空が歪む」というイメージです。太陽は重いので周りの時空をぐーっと大きく凹ませる → 地球はその凹みのふちを、転がるように回っている=それが公転というわけです。
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つまり、今のところ私たちの物理学は、「ミクロの世界=量子力学」と「マクロの世界=相対性理論」を完全に融合できていないのです。
万物の理論は宇宙の設計図を解き明かすことでもあり、これこそが現代物理学のフロンティア。
こうした理論がもし完成すれば、宇宙がなぜこのように生まれ、なぜこのように存在し、そしてどのようにこの宇宙が終わるのか、そのすべてが一つの方程式で語れるかもしれません。
私たちが宇宙という空間に住んでいる以上、この理論は我々の生活にも関わってくることです。
▲ 量子力学についてはこの記事参照
宇宙に存在するすべての物質は例外なく互いを引き合っており(これが最大の神秘)、私たちが普段感じている「重さ」も、地球と私たちとの間に働く引力、つまり重力によるものです。
そしてこの力は、地球とリンゴのような小さな関係に止まらず、地球と月、月と太陽、太陽と他の恒星、そして、何万億光年先の銀河と銀河までもが重力によって見えない糸で結ばれています。
重力は、この宇宙の構造そのものを形作っている力だと言っても過言ではありません。
宇宙空間では重力によって星が誕生し、星のまわりに惑星が集まり、その重力のバランスで軌道を描き、はるか遠くの星ですら、私たちの体をわずかに引っ張る力を持っているんです。
そして私たちの体もまた、その遠くの星に向かって引力を返していて、たとえその力が極端に小さくても、そこには確かにつながりがあります。
まるで宇宙がひとつの大きな生物のように、すべてのパーツが互いに影響を与え合って存在しているという事実に… 身震いしませんか?
距離が離れるほど重力が弱くはなると言えどもゼロにはならず、光すら届かないような銀河からの重力さえも私たちに影響を及ぼします。
そんな重力の究極の姿が、あまりにも重力が強すぎて、光さえも脱出できないブラックホール。
重力はすべてを引き寄せ、集め、形作り、やがて一つに戻そうとするー ビッグクランチ。
ビッグバンから膨張し続ける宇宙も、いつかその重力によって収縮をはじめ、最終的にはすべての星や銀河が再びひとつに集まるビッグクランチが起こるかもしれない、という仮説があります。

しかし、驚くべきことに、この重力は、自然界を支配する4つの基本的な力である【重力・電磁気力・強い力・弱い力】の中で最も弱い。
「弱い力」より「重力」のほうが弱いというのがまた紛らわしいのですが、私たちにとって最も身近な重力は、地球や銀河のような巨大な天体でなければ目に見えるほどの影響を及ぼせません。
たとえば、あなたが机の上に置いた小さな磁石が、鉄くずを持ち上げたとき、あのわずかな磁力が地球の重力に勝ってしまうのです。
重力は相対的には微かな力なのに、それでもこの宇宙の大構造を支配しているのは、他の3つの力があまりにも短い距離でしか働かないから…。
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最も弱く、しかし最も遠くまで届く力
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電磁気力や強い力は原子や素粒子の世界で主に活躍しますが、重力は無限の距離にわたって働き続けるという性質を持っていて、距離がどんなに離れても、力は絶対ゼロにはならない。
この矛盾を感じる性質こそが、重力を宇宙スケールで最も支配的な力たらしめている理由です。
こんなにも弱いのに、星々の配置や銀河の形成も、時間の流れさえも変えてしまう。

私たちが地面に立っていられるのも、夜空に星が瞬いているのも、宇宙の果てまで見える景色が存在するのも、すべては重力のおかげ。
こう言ってしまうと宗教っぽく聞こえてしまうかもしれませんが、大真面目に科学的な話として、この宇宙の始まりから終わりまでをつかさどる重力はまさに “宇宙の意志” のような存在です。

