必読!ポーランド旅行で知っておくべきこと

チョコが無限に増える方法【ポーランド数学者が発見】バナッハ=タルスキーの定理

バナッハ=タルスキーのパラドックス
The following two tabs change content below.
クラクフ市公認ガイドのカスプシュイック綾香(本名)です。2014年以降、ポーランド在住。ガイド・通訳業の傍ら、旅行や生活に欠かせないポーランド情報をお届け中!
詳細プロフィールはココ YouTube はじめました


※コンテンツの無断転載禁止(リンク歓迎)
.

ウクライナ支援活動のご報告
ルワンダの教育支援団体設立

 
Automatic posting

「バナッハ=タルスキーのパラドックス」こと「バナッハ=タルスキーの定理」をざっくりと説明します。この定理は、今からちょうど100年前の1924年、ポーランド人数学者のステファン・バナッハ/バナフとアルフレト・タルスキー/タルスキによって発見されました。お二人の偉業に拍手

.

この定理をめちゃくちゃ
おもしろい方法で説明したセンスいい動画

あやか
いやー、動画のコメントが10万に達してるのがスゴイ!こんなに賑わってるコメ欄見たことない!

 
.

バナッハ=タルスキーの定理とは?

1つの球体を有限個のパーツに分割して並べ替えると、同じ大きさの2つの球体を作ることができる

 

この定理をもっと噛み砕いて言うと…
ここに1個のチョコがあるとします。このチョコを特別な方法で小さくカットし、そのカケラを動かしたり、回転させながら並び替えます。すると、同じ大きさのチョコが2個できます。この動作を無限に繰り返すと、チョコは無限に増えていきます!
 
 ふつうに考えたら、チョコレートをカットして並び替えるくらいで無限に増えるなんて絶対あり得ませんね。質量保存の法則に反しています。
だから、この定理は一般的に「バナッハ=タルスキーのパラドックス」と呼ばれています。つまり【数学的にはチョコレートは無限に増やせる】ということであって、再現は出来ません。ポイントは、「無限」という数学ならではの考え方にあります。
 
  ここで「やっぱり現実の話じゃないのか…」と興醒めした人も多いはず。そう思ったなら、それがまさにこの定理の狙いです。数学の世界では、日常の感覚とは全く違う結果が生まれるー!
そのことを直感的に示すのが、この定理の存在意義とも言えます。数学的に可能だからといって、物理的にも可能とは限らないということですね

 
.

なぜ、”数学的に” だったら増える?

数を数える子ども

 現実の世界で何かを小さく切る場合、ある程度のカタチが見られます。しかし数学的に切る場合、現実の世界では再現できないほどものすごく複雑なカタチで、無限にたくさんの点を含みます。「無限」は実に特別。数を数えるにしても、1.1, 1.2, 1.3… はたまた、1.01, 1.02, 1.03…と数えることもできるわけで、こうやって考えると、私たちは0と1の間さえ正確に数えることが出来ません。
 
 さらに、数学的に分けられたカケラはあまりにも小さく、ゆえに「体積」(ルベーグ測度)という考え方は意味を持ちません。なぜなら、そのカケラは物理的なものではなく、無限に細かく入り組んだ特殊な形をしているので体積を測れないのです。
「無限にたくさんの点」を、位置や方向を工夫しながら新しい場所に移していくとき、1つのカケラに含まれる点が無限なら、それを移動してもまた無限…。無限の点をどこにどう移しても並べ替えは自由。動かす回数にも制限がないため、元のサイズと同じ球を任意の個数作り出すことができます。
 
 さて、この定理は「選択公理」という数学の基本的な概念に関係します。選択公理とは、「いくつかの入れ物があって、それぞれに1つのモノが入っているとき、どの入れ物からも1つずつモノを選び取ることができる=無限の集合からモノを選び出すことを保証するルール」という考え方。言葉にすると単純ですが、この選択公理を使わないとバナッハ=タルスキーの定理は証明できません(実務的視点から「選択公理は不要」という人もいます)。

 
.

選択公理に視点をおいて考えてみる

ビー玉

 たとえば、あなたはたくさんの袋を持っているとします。それぞれの袋にはいろんな色のビー玉が1個以上入っていて、あなたはすべての袋から1個ずつビー玉を取り出して、新しい袋に入れることができます。…と、ここでポイントとなるのが、選択公理では「中身が無限にあったり、見えなかったりしても選べる」と仮定している点。中身が無限にある場合でも選べる、これが直感に反するのです。
 
 こういった矛盾をはらむ選択公理のもとで成り立つ数学理論は、ほかにもあります。この定理を直感的におかしいと否定することは、選択公理のうえで成り立つほかの理論をも否定することに繋がりかねません。そうなると、「いちからやり直し!」という数学の問題がわんさか出てくるかも…。
 
 ここで、バナッハ=タルスキーの定理に立ち返って考えてみましょう。この定理ではまず、球を分割する際に「無限に細かくて見えないような点」の集合を選び出す必要があります。現実の世界では「この点とあそこの点と…」と一つ一つ選んでいけばいいのですが、「無限に多くの点」からどうやって特定の点を選べばいいんでしょうか。そもそも見つけ方を探すのが不可能のように思います。しかし、ここで選択公理を使うと、無限にたくさんの点から1つずつ選び出すことが可能になります。となると、無限の動作が延々とつづき……、選択公理の問題点が見えてくるわけです。数学者さん、こんなワケの分からない公理を認めていいんですか?と。

.

 この定理は証明されているので、パラドックスは解かれています。ただ、この証明に関しては、この定理がタイトルの本が数冊と出版されるほど難解なものです。この記事は「数学には奇妙な定理もあるんですよ。面白いでしょ?」というノリで書いたものなので、説明はここまでにしておきます

.

 
.
.

この記事のまとめ
アイコン とういうことで、選択公理を使うと、無限の集合から無限に要素を選ぶことができてしまいます。錬金術のごとく。しかし、その選び方は具体的に示されず、理論上の存在が保証されるだけ。具体的な構成(実際の選び方)を重視する数学者には納得しづらく、この定理のパラドックスを発端に、数学者の間で「選択公理は妥当なのか」という非常に深い議論が生まれました。バナッハとタルスキーは数学界を大きく揺るがしたのです!
未だ、これについてネット上でも様々な意見が見られますが、現代の数学では、選択公理を前提とした数学(ZFC)と選択公理を使わない数学の両方が研究されています

 

応援メッセージ送信&投げ銭(🇺🇦支援)できます (^ ^)   ポーランドなびを応援する
あやか
この記事がお役に立ったら、Facebookページをフォローしていただけると嬉しいです!
Facebookページをフォローしよう

こちらの記事もおすすめです



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です