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この記事の内容
せっかくポーランド語を学習しているなら、文法だけでなく発音方法もきちんと知っておきたいですよね。発音をしっかり学んでおけば、自信を持って話すことができるはず。それに、日本語にある音だけでポーランド語をすべて正確に発音するのには限界があります。
当記事ではポーランド語にある全36音(表記は39、音韻は36)を正しく発音するためのコツを紹介します。と言っても、練習して習得する必要がある音は一部。理解するのと実際に発音できるかどうかは別問題ですが、一度すべてに目を通して発声してみてください
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この記事の目次
❶ 発音の特訓は力を入れすぎずに
❷ 音声学の基本のまとめ(復習)
❸ 母音の発音方法
口母音 a, e, y, i o, u=ó
鼻母音 ą, ę
❹ 共鳴音の発音方法
鼻音 m, n
流音 r, l
半母音 ł, j
❺ 阻害音の発音方法
破裂音 p, b, t, d, k, g
摩擦音 f, w, s, z, sz, ż=rz, ch=h
破擦音 c, dz, cz, dż
❻ この記事のまとめ
ポーランド語は超難解言語ではありません!まず知っておきたい5つの特徴
【注意】私の音声学の知識は独学で得たものです。参考程度にお読みください。おかしな表現や、間違いがあればご指摘をお願いします。
発音の特訓は力を入れすぎずに
こんな記事を書いておいて何ですが、私個人の意見としては、必死になって発音能力を向上させる必要はないと思っています。
発音を気にかける余裕があるほどポーランド語が上達してきたとか、発音がちゃんとできないと次に進めない人は別です。
ただ、初級者〜中級者が発音に囚われすぎるのは少しもったいない気がしてなりません。
私たちはあくまで日本人であり、日本ですら地方や地域で発音に差があります。
それはポーランド人もいっしょで、地方によって発音やイントネーションは異なるもの。
r/l や b/w くらいは使い分けられたほうがいいとは思いますが、それらを間違えて発音したところで「コミュニケーションが全然成り立たない」なんてことはありません。
きちんと発音できるに越したことはないですが、囚われすぎて言いたいことがすぐ言えないくらいなら、ふつうに日本人の発音でポーランド語を話したほうがいいでしょう。
それで笑われることなんてありませんよ
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音声学の基本のまとめ(復習)
硬子音:軟子音以外の子音(非口蓋化音)
軟子音:i の音がある音や拗音(口蓋化音)
共鳴音:鼻音、流音、半母音の総称
鼻音 :m, n
流音 :r, l
半母音:ł, j
阻害音:破裂音、摩擦音、破擦音の総称
すべての音に対となる有声音または無声音がある
有声音:声帯が振動する音
無声音:声帯が振動しない音
破裂音: p, b, t, d, k, g
摩擦音:f, w, s, z, sz, ż, rz, ś, ch=h, chi
破擦音: c, dz, cz, dż
▲上記では省略したが、阻害音は口蓋音(pi, biなど)も含む
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阻害音:有声音と無声音の対応 | |||||||||
無 | p | t | k | f | s | sz | c | cz | ć |
有 | b | d | g | w | z | ż | dz | dż | dź |
母音の発音方法
日本語の母音は平仮名あ行の5つですが、ポーランド語では鼻母音も含めると a, e, y, i o, u=ó, ą, ę で8つの母音が存在します。
ただ “y” を除き、カタカナ表記で発音しても問題ないのでご安心ください。
英語の母音は26個(なんとアだけでも5つの母音)のため、むしろかなり易しいです。
男性名詞の形容詞は主格である限り語尾が常に “y” で終わるので、できれば “y” の音は早いうちに習得しておきましょう。
この音はカタカナ表記がとても難しいです。
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母音 a, e, y, i o, u=ó, ą, ę
a-ア、e-エ、i-イ o-オ, u=ó-ウ、これらはそのまま読んでも構いません。”u” と “ó” はまったく同じ発音のウで、スラブ語起源の単語には “ó” が使われます。”o” はオとアの間の音で日本語のオよりも口を縦に大きく広げて発音しますが、多くのポーランド人にはどちらのオでもまったく同じに聞こえるそう。おそらく、ポーランド語のオの音が1つしかないからでしょう(日本語にはラ行が1つしかないので r と l の聞き分けが難しいのと同じ原理)。
【国際音声記号】a/a, e/ɛ, i/i, o/ɔ, u=ó/u
”y” は単体で発音するとウに近いイの音です。語頭や語尾で “wy-” や “-ny” などのかたちで発音することがほとんど。一般的にはそれぞれヴィ、ヌィと表記されるものの、日本人の耳には前後の音の影響でヴェ、ネと聞こえることがあるかもしれません。ただし、カタカナ表記通りヴィ、ヌィとハッキリ発音すると母音なのに子音+母音に聞こえるので注意。”y” は日本語のイの口でさらに横に広げ、舌の位置を真ん中にしてイと発音します。
【国際音声記号】y/ɨ
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鼻母音 ą, ę
鼻母音は調音時に呼気が口腔だけでなく鼻腔へも抜ける音をいいます(鼻をつまんで発音するとこもった音になる)。ą-オン、ę-エンは特にどちらも発音するコツはなく、そのまま読んでOK。ただし、1人称現在形などで ę が語尾に来る場合はエンよりエと発音したほうが自然な場合があります。
【国際音声記号】ą/ɔʷ, ę/ɛʷ
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共鳴音の発音方法
共鳴音は、声帯が振動する音を声道内で共鳴させることによって作られる音の総称(要するに、濁点の付かない音が共鳴音)。
鼻音、流音、半母音に分けられますが、この中で日本人にとって厄介な音は流音。
しかし実際は流音の “r” と “l” は聞き分けが難しいだけで発音はかんたんです。
母音の “y” よりは早く習得できるかも…
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共鳴音 m, n, r, l, ł, j
”m” は日本語のマ行の子音(ma, mi, mu…の “m” の音)、”n” はナ行の子音の音(na, ni, nu…の “n” の音)。軟子音(mi/ni)の場合は mia-ミャ-、miu-ミュ、mio-ミョ…と発音し、”n” が軟子音の場合も同様です(日本語でいう拗音)。
❶ m/n は y や子音の前、語末では硬音
❷ mi/ni + 母音のとき、i は軟音化記号
❸ mi/ni + 子音のとき、i はハッキリ発音
【国際音声記号】m/m, n/n
舌を浮かせた状態(舌先をどこにも当てない)で出す「ル」が “r” の音。「ラーメン」のラを強めに発音した際の(子音の)音は “r” です。
一方、舌先を上の前歯の付け根に当てた状態で出す「ル」が “l” の音。舌を上の方向にまるめ、硬口蓋に接近する舌の裏側の部分を硬口蓋にべったり付けるようして「ラ」と発音してもOK。「リラックス」と言ったときのリは “l” の音になります。
❶ r/l は i の前では軟音化する
❷ ri/li + 母音は rj/lj + 母音と同じ発音
❸ l は硬化子音なので後に y は来ない
【国際音声記号】r/r, l/l
※日本語ラ行は “r” と “l” に近い音が混在している
”ł” は子音のみだとウの音、母音が続くとワ行になります。流れるように「ワイウエオ」と言うと「エオ」が「ウェウォ」のような音になり、ポーランド人には “ła/i/ł-u/łe/ło” に聞こえます。
“j” は “i” とほぼ同じ音。母音が続くとヤ行になります。”j” 単体の音を正確に発音するのは難しいものの、単語の中で発音する場合は j と i を自然と使い分けられる人がほとんど。ただしポーランド語を読むのに慣れていない人は一語一語ハッキリ発音する傾向があるため、単語の中の “j” が “i” の音になりがちです。まずはポーランド語のボキャブラリーを増やし、詰まらず読めるようになりましょう。
【国際音声記号】ł/w, j/j
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鎌倉時代までは日本人も「ウェ」と「ウォ」を使い分けていたようですが、「エ/オ」の音に変わってしまいました。ポーランド語は日本語よりも音が多いように感じられるかもしれません。しかし日本語の音韻変化の歴史をたどってみると、一部はかつての日本語にもあった音だと分かります。
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阻害音の発音方法
阻害音は共鳴音の反対で気流の妨げによって作られる音であり、音の数も多いです。
阻害音は破裂音、摩擦音、破擦音に分けられ、この中でも破裂音はすべてカタカナ表記で発音しても問題のない易しい音。
個人的に最も難しいと感じているのは摩擦音 “sz+母音” ですが、この音さえマスターできれば【ポーランド語の発音の壁】を7割超えたと言っても過言ではないでしょう。
▼音の数が多いため3つに分けて解説
破裂音 p, b, t, d, k, g
”p” は日本語のパ行の子音(pa, pi, pu…の “p” の音)、”b” はバ行の子音の音(ba, bi, bu…の “b” の音)。軟子音(pi/bi)の場合は pia-ピャ-、piu-ピュ、pio-ピョ…と発音し、”b” が軟子音の場合も同様です(日本語でいう拗音)。
❷ pi/bi + 母音のとき、i は軟音化記号
❸ pi/bi + 子音のとき、i はハッキリ発音
【国際音声記号】p/p, b/b
”t” は日本語のタ行タテトの子音(ta, te, to の “t” の音)、”d” はダ行ダデドの子音の音(da, de, do の “d” の音)。基本的に外来語を除いて ti/di と tu/du とつづられることはありません。
【国際音声記号】t/t, d/d
”k” は日本語のカ行の子音(ka, ki, ku…の “k” の音)、”g” はガ行の子音の音(ga, gi, gu…の “g” の音)。軟子音(ki/gi)の場合は kia-キャ-、kiu-キュ、kio-キョ…と発音し、”g” が軟子音の場合も同様です(日本語でいう拗音)。
❷ ki/gi + 母音のとき、i は軟音化記号
❸ ki/gi + 子音のとき、i はハッキリ発音
【国際音声記号】k/k, g/g
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摩擦音 f, w, s, z, sz, ż=rz, ch=h
”fa/fi/fe/fo” は「ファ/フィ/フェ/フォ」と発音しても問題ありません。ただし日本語のフは ch/h の音であるため、”f” や “fu” を発音する際は注意。「ハヒフヘホ」と言うと上下の歯はどこにも触れていないのが分かりますが、”f” では前歯を下唇の裏または下唇を軽く噛むようにし、そのすき間からフの音を出します。「ファ/フィ/フェ/フォ」と発音するときは自然に前歯が下唇の裏に付けている人が多い(ハ行の口ではやや発音しにくいため)ので、この要領であまり口を大きく開けないようにして発音してみてください。”w” は “f” の有声音なので “f” と同じ要領でヴと発音するだけです。
❶ fi/wi + 母音のとき、i は軟音化記号
❸ fi/wi + 子音のとき、i はハッキリ発音
【国際音声記号】f/f, v/v
”s” は日本語サ行の発音でOK。有声音の “z” をザ行で発音すると “dz” に聞こえるので “z” は修正する必要があります。まず、日本語のスを発音する際のように唇は突き出すような形のまま、歯を軽く閉じ舌先を前歯の裏に付け「スーー」と音を伸ばして発音してみてください。このとき、寝ているときのスースーのような感じで声を出さないようにします。そしてそのまま「ズー」と音を変えてみてください。舌先に振動を感じればそれが “z” の音です。日本語には “z” と”dz” の音が混在しているので発音は難しくないはずですが、特に文頭の “z” は “dz” と言いがちなので注意しましょう。
❶ si/zi + 母音のとき、i は軟音化記号
❸ si/zi + 子音のとき、i はハッキリ発音
【国際音声記号】s/s, z/z
日本人がシュと発音すると、”siu” の音になります。日本語のシュ(siu)は舌をどこにも当てずに発音しますが、”sz” は舌先が硬口蓋〜歯茎後部に軽く触れ、英語の “sh” と同じ発音になります。英語のプリーズに相当する “proszę” を日本人が文字通りに発音すると “prosię”(子豚)となるのでどうしても習得したいところですが、難易度はかなり高め。しかしスを発音する要領でシュと言うと “sz” に非常に近い音になります(母音がつづくと “si-” の音に近くなってしまうのが残念)。
有声音の “ż” と “rz” はどちらも同じ発音。これもふつうにジュと発音すると “dziu” や “dż” の音になるため、”sz” の要領でそのままジュと発音しましょう。ちなみに “ż=rz” は “k/ch/p/t” の後につづくと非常に発音しづらいので、この場合は無声音の “sz” の音になります(有声音の無声化)。
【国際音声記号】sz/ʃˠ, ż=rz/ʒˠ
”ch” と “h” はどちらも同じ音。日本語ハ行の発音で問題ありません。また阻害音には原則、無声音と有声音のペアがありますが、”ch=h” には対となる有声音がありません。
【国際音声記号】ch=h/x
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破擦音 c, dz, cz, dż
”c” は日本語のツ(tsu)の子音、有声音の “dz”(dzu)もヅの子音となります。
❶ c/dz + 母音のとき、i は軟音化記号
❸ c/dz + 子音のとき、i はハッキリ発音
【国際音声記号】c/ts, dz/dz
舌先を硬口蓋〜歯茎後部に付け、次に舌先を付けておいた部分から「チュ」と言いながら下の方向へ思いっきり離した音が “cz” の音です。日本人がふつうにチュ/ヂュと発音すると “cz/dż” に極めて近い音になるので特に訓練する必要はありません。有声音は “cz” の発音の要領でヂュと発音します。
【国際音声記号】cz/tʃˠ, dż/dʒˠ
あまり練習しすぎると空回りするので、一度で習得しようとしないのがポイントです。ゆっくり身につけていきましょう。それにほとんどの音は日本語と同じ発音でも通じるし、仮に発音が正確じゃなかったとしても “問題なく通じるなら”(=極めて近い音)気にする必要はありません。極端に言えば、外国人が「写真撮ってください」を「シァシン撮ってください」と言ったところで私は気付かないと思うし、むしろ「日本語が話せるんだ」と感心します。皆さんも同じではないでしょうか?
日本人にとって練習が必要な音は y・r・l ・w・z・sz(中でも y・sz が難しい)です。単体では発音ができてもいざ単語で発音しようとすると出来なかったり、その逆もあるでしょう。そして、子音だけの音を出すのも日本人は苦手。それでもポーランド語をたくさん聞いて話せば、誰でもふつうにポーランド人とコミニュケーションが出来るはず。母音だけで26個もあるような英語と比べれば、ポーランド語は発音の面では楽であることに間違いありません。あまり正確さにこだわり過ぎずないように、それが私からのアドバイスです
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