必読!ポーランド旅行で知っておくべきこと

ポズナンのエニグマ暗号センターへ!世界の歴史を変えた暗号解読の舞台にのめり込む

ポズナンのエニグマ暗号センター
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カスプシュイック綾香
2018年に日本人初のクラクフ公認ガイド資格を取得し、クラクフやユダヤの歴史観光案内をはじめ、アウシュヴィッツやヴィエリチカ岩塩坑での案内も行っています。ポーランド情報メディア「ポーランドなび」を運営し、長年の現地生活と観光案内の経験をもとに、役立つ情報を発信中
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エニグマ暗号センターを徹底紹介

 突然ですが、みなさんは暗号を解いたことはありますか?暗号といえば、何を思い浮かべますか?
スパイ映画に登場する謎のメッセージや、複雑な数字の羅列、とにかく難解…そんなイメージですよね。

 先日、久しぶりにポズナンに訪れたとき、【エニグマ暗号センター(Centrum Szyfrów Enigma)】というユニークなスポットを発見しました。
紙と鉛筆もちゃんと用意されていて、世界中のいろんな種類の暗号解き放題、知る人ぞ知るヴォイニッチ手稿まで出てきたのにはビックリ。マニアックな世界に浸れる、数時間は滞在できるおすすめの施設です!

あやか
暗号の歴史を追体験できるような、展示方法のレベルの高さにびっくり。
エニグマ解読


2026年10月現在の営業時間と入館料

火曜日〜金曜日…09:00〜18:00
土曜日・日曜日…10:00〜19:00
月曜日は休館
※ 祝日も休館になる場合があるので訪問前はHP要確認
一般(大人)/ 割引 35PLN/29PLN
家族(子ども1人含む最大5人まで) 75PLN
・オーディオガイドは入場料に含まれます(ポーランド語、英語、ドイツ語、ロシア語、ウクライナ語)。
・チケットは日時指定制で、15分間隔で入場します。
・現地窓口でもオンラインでも購入可能です。
博物館の所在地

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各公共交通機関での最寄り駅
電車:ポズナン中央駅から徒歩約15〜20分
トラム:Zamek、Gwarna Fredry などで下車


 


まずは暗号解読に挑戦してみよう

秘密の暗号文 難易度★☆☆☆☆

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エニグマの暗号
エニグマの暗号
解読ルール…青の上段はアルファベット順、白の下段は暗号機の変換表です。暗号文の文字を下段から探し、その真上の文字を読みます。
1文字解読するたびに、下段だけが右へ1マス移動します。右端の文字は左端に戻ります。

※ 答えは当記事の下のほうにあります

あやか
いったん、ルールが飲み込めれば紙に書かなくても解ける初級向けです。

 


訪問前に知っておきたいエニグマの真実

 ー 20世紀に入ると、暗号はこれまでの紙とペンだけで解く推測式とは異なり、複雑な仕組みを持つ暗号機が登場しました。その代表例が、第二次世界大戦中、ドイツ軍が使用していた暗号機「エニグマ」です。
 エニグマは長い間、解読が極めて困難な暗号システムと考えられていました。エニグマの解読といえば、映画「イミテーションゲーム」の影響もあり、イギリスの数学者アラン・チューリングを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、実はイギリスが本格的に解読に取り組む以前から、ポーランドの数学者たちがエニグマの仕組みを解明し、暗号解読に成功していたのです。
 
 その中心となったのが、マリアン・レイェフスキ、イェジ・ルジツキ、ヘンリク・ジガルスキの3人でした。彼らはポズナン大学で数学を学び、ポーランド軍の暗号局に採用された後、1932年末にレイェフスキがエニグマの内部配線の解明に成功。その後も3人は協力して暗号解読の技術を発展させ、解読作業を効率化するための装置(ボンバの開発)や方法を考案しました。1939年7月、ドイツによるポーランド侵攻(のちの第二次世界大戦)が迫るなか、ポーランド側はそれまでの研究成果や解読技術をイギリスとフランスに提供します。これが、戦時中に連合国がエニグマ暗号を解読するうえで重要な出発点となったのです。このエニグマ暗号センターを訪れる際には、エニグマ解読の土台を築いたポーランドの3人の数学者の存在にぜひ注目してみてください。

エニグマ解読

 


見学所要時間は最低でも1.5〜3時間

暗号解読

 エニグマ暗号センターでは、さまざまな暗号の歴史や仕組みを、映像や体験型展示を通して学びながら進みます。後半でエニグマが登場しますが、ポーランドの数学者たちがエニグマに挑んできた過程が実に興味深い。
 見学所要時間は、基本的なコースで約1時間30分、オーディオを聞きながら展示の大部分を見学する場合は約2時間が目安です。体験型展示にじっくり取り組んだりする場合は、最大3時間程度かかるかも。入場にはQRコードが必要で、退場時にもQRコードをスキャンする仕組みになっているのですが、個人的には、最後に暗号を解かなければ外に出られないようなシステムになっていたら完璧だったのになぁ、なんて思いました(笑)。
 
 さらに、6〜10歳の子どもと保護者を対象とした無料の「Rodzinna Strefa Szyfrów(家族向け暗号ゾーン)」が毎月第一日曜日の11時〜16時に開放されており、カードゲームやパズルを通して暗号の仕組みを楽しく学ぶことができます。通常の有料展示とは別の体験スペースで、私が訪れた日はたまたま第一日曜日だったので、娘も時間いっぱいまで遊んでいました。有料展示そのものは、算数が好きな小学生高学年以上の子どもから大人まで楽しめると思います。大人なら、基本的な計算ができて読解力があれば大部分は挑戦できるはず

 


興味深い展示1|クシを使った暗号解読

櫛を使って暗号解読

 展示の最初のほうには、1920年のポーランド・ソビエト戦争で活躍したポーランド人の暗号解読者、ヤン・コヴァレフスキ(Jan Kowalewski)に関連する暗号があります。当時、ソビエト・ロシアの赤軍は軍事情報を暗号化して無線で送信していましたが、コヴァレフスキはクシの歯を一部折り取り、それを暗号文に当てながら文字の規則性を調べました。この展示では、ボルシェビキ(ロシア革命を主導し、のちにソビエト連邦を成立させた共産主義勢力)が使用していた暗号の仕組みをもとに、実際にクシを使って暗号解読に挑戦できます。
 
Delegat暗号
 暗号解読にあたり、コヴァレフスキは、ロシア語で「師団」を意味する【ДИВИЗИЯ】という単語に目をつけました。軍隊の通信であれば、この単語が登場する可能性が高いと考えたのです。【ДИВИЗИЯ】は7文字で、2文字目、4文字目、6文字目に同じ「И」が登場します。当時の暗号では、1文字を2桁の数字に置き換える方法が使われていました。たとえば、【ДИВИЗИЯ】が【21・45・78・45・63・45・90】という数字に置き換えられていたとすると、「45」が一定の間隔で3回登場します。コヴァレフスキは、クシの歯を規則的に折り取り、暗号文の数字の並びに当てながら、このような繰り返しを探したのだとか。「師団」という単語の位置を特定できれば、そこから5種類の文字と数字の対応関係を推測できるので、さらに軍の指揮官の名前や地名なども手がかりにして、クロスワードパズルのように暗号を解読していったのです。
 
 これは「Delegat暗号」というもので、コヴァレフスキらによる暗号解読は、赤軍の動向を把握するうえで重要な役割を果たし、1920年のワルシャワの戦いでポーランド軍が勝利する一因となりました。文字の並びに隠された規則性を見つけることで暗号を解読できるので、複雑な機械は必要にないしても、かなり骨の折れる作業です…。ちなみに、実際の暗号では、文字を数字に置き換えた後、さらに数字の鍵を加える処理がありました。上の例は基本的な考え方を示した簡略版であり、実際の解読方法をそのまま再現したものではありません。

 


興味深い展示2|謎のヴォイニッチ手稿

ヴォイニッチ手稿

 見学中盤にさしかかったとき、ヴォイニッチ手稿を発見!ヴォイニッチ手稿は、15世紀前半に制作されたと考えられている、世界で最も謎めいた書物のひとつです。約240ページにわたって、現在も解読されていない独特の文字がびっしりと書き込まれており、見たこともない植物や天体図、模様、星座、液体に浸かった女性たちの姿など、不思議な挿絵が数多く描かれています。
 
 これは、1912年にポーランド人の古書商のウィルフリッド・ヴォイニッチが入手したことから、この名前で知られるようになりました。手稿に使われている文字は既知の言語や文字体系と一致せず、そもそも意味のある文章なのか、暗号化された文章なのか、あるいは人工的に作られた言語なのかさえ分かっていません。これまで多くの専門家が解読に挑戦してきましたが、みなさんお手上げ。なお、羊皮紙の放射性炭素年代測定では1404〜1438年頃のものと推定されていますが、誰が何の目的で制作したのかも一切不明です。何百年もの間、世界中の研究者を悩ませ続けているこの手稿は、暗号や未知の文字にまつわる謎の象徴ともいえる存在。

 


興味深い展示3|まるでQRコード…?

ジガルスキ・シート

 こちらは、ポーランドの数学者ヘンリク・ジガルスキがエニグマ解読方法の一つとして考案した「ジガルスキ・シート」です。エニグマそのものの仕組みを知らないと、説明しにくいのですが… まず、エニグマは機械の設定が分からなければ元の文章を読むことができませんでした。そこでジガルスキが考案したのが、無数の小さな穴を開けた紙を重ね合わせる方法です。
 
 100個の鍵の中から、たった1個の正しいカギを探すゲームだと思ってください。エニグマには、文字を暗号に変えるための設定がありました。その設定が分からないと、暗号文を読めません。そこで、ジガルスキは、穴の開いた紙を使って、正しい設定を探す方法を考えました。たとえば、こんな3枚の紙があるとします。
 
ジガルスキ・シート
 3枚とも同じ位置に穴があるのは、上段中央だけですよね。ほかの場所は、少なくとも1枚の紙でふさがれてしまいます。このようにして、たくさんあった設定の候補を、少数に絞り込むのです。ただし、ここが重要。ジガルスキは適当に紙に穴を開けたわけではありません。エニグマの文字変換に現れる特定の規則性を数学的に分析し、その条件に合う位置に穴を開けました。
 つまり、穴が重なったからといって、すぐに暗号文が読めるわけではありません。正しい設定を見つけるための有力な手がかりが地道に得られるということです。写真にある無数の白い四角は、この仕組みを表しています。穴が答えを教えてくれるのではなく、数学的に不可能な設定を次々に消してくれるという仕組みです。

 


興味深い展示4|ボンバのレプリカ

ボンバ

 全体の展示の最後のあたり、いよいよ、目玉の「ボンバ」が登場します。ボンバは、1938年にポーランドの数学者マリアン・レイェフスキが考案した、エニグマの設定を探し出すための電気機械式の装置です。
 
 エニグマは内部にある回転式の部品(ローター)の設定によって文字の変換方法が変わるため、暗号文を解読するには、その設定を突き止める必要がありました。そこでレイェフスキは、エニグマ6台分のローターを組み合わせた装置を開発し、暗号文に現れる特定の規則性を利用して、正しい設定の候補を自動的に探せるようにしました。それまで人間が手作業で調べていた膨大な組み合わせを機械で検証できるようになり、約2時間で17,576通りのローター位置を調べることが可能になったのです。当時はローターの並べ方が6通りあったため、それぞれに対応する計6台のボンバが製造されました。ただし、ボンバが暗号文を直接翻訳してくれるわけではなく、解読に必要な設定を見つけるための装置でした。その後、ドイツ軍が暗号機の仕様や運用方法を変更したため、ポーランドのボンバだけでは対応できなくなりましたが、この発明は、後にイギリスの数学者アラン・チューリングらが開発した暗号解読装置「ボンブ(Bombe)」に先立つ重要な成果となりました。

ドイツの戦争責任

 

 
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ちょっと、つぶやいていい?
アイコン エニグマ暗号センターでは、古代から現代までのさまざまな暗号や秘密通信の技術について学ぶことができます。扱っている暗号はザッと30種類はあるかもしれません。メインのエニグマはもちろん、シーザー暗号やスキュタレー暗号、モールス信号といった有名どころもしっかり紹介されています。暗号の世界を体験できる新感覚の穴場スポット!あ、ところで、最初に出題した暗号文の解読はできたでしょうか?
答えは【WITAM】です。ポーランド語で「ヴィタム」と読み、「ようこそ」という意味

 

 

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