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ポーランドで初めてお葬式|それは予想外に穏やかで満たされた時間でした

天国で会いましょう
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クラクフ市公認ガイドのカスプシュイック綾香(本名)です。2014年以降、ポーランド在住。ガイド・通訳業の傍ら、旅行や生活に欠かせないポーランド情報をお届け中!
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 私が生まれて初めてお葬式に参列したのは日本でもなく移住先のポーランド、それは夫の父方のおばあちゃんのお葬式でした。

 おばあちゃんはいつも朗らかでニコニコしていて、「視線を感じるな…」と、ふと彼女のほうを見ると、やっぱりニコニコしながら私の目を見ている、お互いに目が合えばウィンクをしてくれる、そんな愛らしい人でした。

 面と向かって長く話したことはなかったですが、よく夫に「妻(私)に話を訳してあげなさい」と言うので、夫はいつも「綾香はもうポーランド語が分かるよ」と言ったり。
そうやって笑って過ごすことが多く、たくさんの曾孫にも囲まれて幸せだったと思います。

 最後に会った2016年12月4日、おばあちゃんとおじいちゃんが夫の実家へやって来たので、ハグや握手をして挨拶しました。
私が近くに来ると「ここに座りなさい」と言ってくれたり、「妻の言うことを聞きなさい」と夫に言っていたこともよく覚えています。

それから約1.5週間が経った頃

 バブチャが緊急手術を要するほどに体調が悪くなりましたが、手術は成功。
前からよく病気になっていてパーキンソン病も患っていたそうですが、そういった話を一切聞いていなかったので、今さら「だから、ぎこちない歩き方だったのか」と気付きました。

 そして手術そのものは成功だったものの、その夜、静かに息を引き取りました。

 翌朝にその知らせを夫から聞き、その直後は突然すぎて理解できませんでした。
おばあちゃんは86歳、ポーランド人の平均寿命からしても長生きをしましたが、あまりにも別れが急だったので思考が追いつきません。

 2日後に行った夫の実家ではじめじめした空気がなく、亡くなった翌日も息子であるお義父さんはいつものように出勤しました
お葬式の準備があるので翌日からお葬式まで休暇を取ったようですが、夫もいつも通り出勤し、悲しそうな顔はするも涙は流しません。

 実家ではおばあちゃんの話をしましたが、不思議なほど暗い雰囲気はありません。
みんな天国でまた会えることを信じているし、むしろ「たくさんの孫と曾孫に囲まれて、今年は結婚65周年パーティーもできて本当に幸せだっただろうね」という話をしていました。

 亡くなったのはクリスマスの前だったので、すぐお葬式はできず、亡くなってから5日ほど経った12月27日に執り行われました。

 そこで26日の夜、眠っているおばあちゃんに家族みんなで会いに行きました。

 会う直前まではみんな悲しそうな顔はせず、久々の親戚との再会もあって笑顔。
それも束の間で、生前のお気に入りだった綺麗な服を着て横たわるおばあちゃんを見た瞬間、和やかな空気は一瞬にして変わりました。

 顔はお化粧で今すぐにでも目が覚めそうに見えましたが、手の色が生きた人間の色ではなく「死」と直面せざるをえませんでした

 あんなに寡黙なおじいちゃんが静かに泣きながら「もうすぐまた会えるからね、楽になったね」と声をかけ、主の祈りを唱え始めるとだんだん周りから涙ぐむ声が聞こえてきました。

 最後に、夫と一緒に冷たくなったバブチャの手に触れ、Do zobaczenia(また会いましょう)と涙をこらえて挨拶しました。

 キリスト教は、神の国、つまり唯一絶対の神を信じることによって死後、天国へ行くことを約束される愛に満ちた宗教です。
ひょっとすると、無宗教や他宗教、無神論の方からすると「おめでたいな」と思うのかもしれませんが、別にそう思われてもいいのです。

 おばあちゃんのお葬式、残された家族の姿を見て、改めて自分が結婚を機にカトリックとなったことに心から感謝しました。

 天国へ行けるからというより、死に対して恐怖を抱かずに揺るぎないもの(神)を信じて生きることは素晴らしいことだからです。

 キリスト教やカトリックの教義を笑いたい人がいるなら笑えばいいと思います。
でも、彼らの信仰心や教義がどれだけ美しいものか知った私は、それだけでもポーランドでこの家族に出会えたことに感謝しています。

 150人以上はいたであろう教会でのお葬式は美しく、満たされた時間でした。
むしろ、天国へ旅立ったおばあちゃんに対して「もう苦しくないね、安心だね、今までありがとう」といった気持ちでいっぱいでした。

 墓地で地下に棺を入れる儀式の時も、美しい聖歌に耳を澄ましながら、おばあちゃんがこんなにも多くの人に愛されていることを知ってなんだか幸せな気持ちになりました。
きっとおばあちゃんも同じ思いのはずです。

 もちろん一時の別れは辛いし、誰よりも一番辛いのはいつも側にいた人。
夫であるおじいちゃんはあまり声を上げて笑わない人で、とにかく紳士という言葉がピッタリな人で、若い頃はおばあちゃんに対して厳しく言って泣かせてしまったこともあるそう。

 でも誰よりもおばあちゃんのことを愛していて、本当に理想の夫婦でした。

 おばあちゃんが亡くなったばかりの頃のおじいちゃんはまだ穏やかでしたが、だんだんと口数が減り、難しくなりました。
毎日おばあちゃんのお墓を訪れ、何も語らずとも、「自分も早く天国に行けたらどんなにいいだろうか」と願っているのが分かりました

 おじいちゃんは毎週のように夫の実家でディナーを食べていましたが、いつしか食事以外は寝てばかりいるようになりました。
座って休んでいるのかと思えば寝ていて、私と夫の間に子どもが産まれたときも嬉しそうではなく、感情を失ったかのように見えました。

 弱りきったおじいちゃんは肺炎で入院し、私たちもお見舞いに行こうと思っていたその矢先、おじいちゃんは亡くなりました。

妻の死から3年数ヶ月

 お葬式が執り行われたのは新型コロナのパンデミック宣言直前で、おじいちゃんのお葬式にも多くの人が駆けつけました。
程なくしてパンデミックとなり、お葬式も近しい家族しか参列できなくなりましたが、ギリギリのタイミングで避けられてよかったです。

 今、おばあちゃんおじいちゃんは隣同士のお墓で眠り、天国にいることでしょう。
おじいちゃんが「おばあちゃんに会いたい」とずっと願っていたのを知っていたので、亡くなったときは「よかったね」と思いました。

 亡くなった人に対して「よかった」なんて言うものではないかもしれませんが、私だけではなく家族みんながそう思いました。
 

 
おばあちゃん、おじいちゃん、
また天国で会いましょう

 

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あやか
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2件のコメント

KRR より:

はじめまして、こんにちは。
私は今大学4年生で、「将来が不安だし、移住とかしてみたいな」と思いネットサーフィンをしていたところ、このブログに出会いました。
いくつか記事を見させていただいて、最初の目的であったポーランドの暮らしももちろん面白いのですが、キリスト教のお話にとても興味を持ちました。
宗教というか、それからくるポーランドの方々(あやかさんのご家族)の考え方がとても素敵ですね。
私もこういう環境で育ってみたかったなと思います。
正直、今更信じようと思っても信じられないので…(心のどこかでいやいないでしょと思ってしまう)。
日本にはキリスト教徒は数%しかいないようですが、もしキリスト教が広まっていれば、自殺率・離婚率・少子化ももっと改善されていた気がします。
ヨーロッパでも信者が減る中、日本が今から変わることは考えにくいですが、このような考え方を知れてよかったです。
情報を発信してくださってありがとうございます。

Ayaka より:

はじめまして、管理人の綾香です。
ブログを読んでいただき、ありがとうございます。
実はこのブログは、ポーランドだけではなくキリスト教関連でもかなりのアクセスを集めています。
キリスト教徒の日本人は珍しいだけに情報も限られ、こうやって信者としてリアルな記事を書いている方はあまりいないですね。
個人的な意見も多いですが、KRRさんの印象に残ったのであれば嬉しく思います。

結婚を機に改宗する人はそれなりにいるでしょうが、心から信じきることができる方は少ないかもしれません。
キリスト教に興味があり、ミサにも参加したりはするものの、やはり信者にはなれないといった方のご相談も多いです。
私は布教を目的にこれらの記事を書いているわけではないため、大した助言もできないのですが…。
しかし仰るとおり、キリスト教徒が大多数を占めていれば少なくとも自殺率や離婚率は改善されると思います。
少子化はこちらでも問題になっていますが、それでも一人っ子の家庭は日本と比べてずっと少ないような気がしますね。
宗教がマイナスイメージを与えている昨今ですが、カトリックは極めて平和的な考えなので誤解がもっと減ることを願います!
(特に欧米の無神論者はカトリックのような真面目の宗教を嫌っている方が多いと聞くので…)

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