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ポーランド語の7つの格の用法を1つずつ丁寧解説|使いこなすコツもアリ

ポーランド語の格の用法
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クラクフ市公認ガイドのカスプシュイック綾香(本名)です。2014年以降、ポーランド在住。ガイド・通訳業の傍ら、旅行や生活に欠かせないポーランド情報をお届け中!
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じっくり読んで学ぼう

 

夫Piotr
格は文中の単語の機能を表すための文法の1つ。ポーランド語には全部で7つの格があって、それぞれで語尾が異なるんだ。こまかく言うと、同じ語尾をもつ格もあるんだけどね。
あやか
すべての名詞は7つの格のいずれかに分類されるよ。日本語でいう “は/が/を/と/の…”(格助詞)みたいなもの。
夫Piotr
日本語でも格助詞なしでは会話ができないのと同じで、格なしで正しい文は作れないから早いうちに理解しておこう!
ポーランド語の基本知識
ポーランド語 格変化表

当記事ではの用法のみ説明しています

格の用法

まず知っておきたいこと

 すべての動詞、前置詞は後ろに来る格が何であるか決まっています。例えば、動詞 “dawać”(与える)の後ろなら与格、前置詞 “bez”(〜なし)の後ろなら生格。また、ポーランド人に「◯◯◯の複数対格は?」と聞くと、ほとんどの人は「”komu/czemu” だから◯◯◯」といったように疑問詞 “kto(人)/co(動物や物)” の格変化形と合わせて答えます。動詞や前置詞は対応する疑問詞とセットで覚えると◎(例:”dać kogo/co”)。

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格の用法をザックリつかもう
ポーランド語 疑問文でのかたち
主格 Mianownikミャノヴニク ktoクト/coツォ
 主格は最初の格であり、名詞の基本形は常に主格です。主格は辞書にあるかたちとなるため “forma słownikowaフォルマ•スウォヴニコヴァ” とも言います。文の主題を説明する格であり、主語は基本的に主格で表します。
生格 Dopełniaczドペウニャチュ kogoコゴ/czegoチェゴ
 2番目の生格は所有を表します。日本語での「の」、英語での “of” にほぼ対応し、特定の前置詞や動詞の後ろに来ます。また、対格が後ろに来る動詞は “否定形になると対格ではなく生格” になります。
与格 Celownikツェロヴニク komuコム/czemuチェム
 3番目の与格は間接目的語を表します。誰かのために何かをしたり、与えたり、誰かから何かを取ったりすることを表す文で、それが誰かを示します。また、特定の前置詞や動詞、副詞の後ろに来ます。
対格 Biernikビエルニク kogoコゴ/coツォ
 4番目の対格は直接目的語(主語や対象が作用する目的語)を表します。また、特定の前置詞や他動詞(目的語に作用を及ぼす名詞=<主語+動詞+名詞1+名詞2>のかたちになる)の後ろに来ます。
造格 Narzędnikナジェンドニク z kimス•キム/z czymス•チェム
 5番目の造格は手段や方法を表します。特定の前置詞や動詞の後ろに来ることがあり、職業や所属するものを表す場合にも用います。また、体を使う動作を表す際、”動く体の部分” は造格になります。
前置格 Miejscownikミェイスツォヴニク o kimオ•キム/o czymオ•チェム
 6番目の前置格は場所を表します。前置格を直後にとる動詞はなく、前置格は常に前置詞 “przy, w, na, po, o” のいずれかの後ろに来ます。
呼格 Wołaczヴォワチュ
 呼格は最後の7番目の格であり、誰かを呼ぶときに用います。呼びかけでしか用いることがないため、7つある格のうち最もシンプルな用法です。
あやか
この中で最も用法が多いのは生格。主格、前置格、呼格はそれほど難しくないから、慣れたらすぐ使えると思うよ!
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ポーランド語の格の用法

主格 – Mianownikミャノヴニク の用法

1. 文の主語を説明する場合

Mama pracuje w szpitalu.
  お母さんは病院で働いています。
主語の Mama は主格単数
 
Kino jest zamknięte w środy.
  映画館は水曜日が定休日です。
主語の Kino は主格単数
 
主語が2〜4以上または最後の桁が2〜4(12と13と14は除く)のものを指す場合や、5未満でも人を指す名詞であれば2人以上から生格となります。ただし後者では主格を使ってもOK。

2. 形容詞の述語的用法

Ona wydała się miła.
  彼女は素敵そうに見えた。
miła は形容詞主格
 
述語となる形容詞が主格になる用法ですが、形容詞+名詞では造格を用います。つまり、Ona wydała się ×miła kobieta とは表現しません。この場合、正しくは、Ona wydała się miłą kobietą(彼女は素敵そうな女性に見えた)です。

3. to jest/są, oto で導かれる述語

To jest nasza szkoła.
  これは私たちの学校です。
nasza szkoła は主格単数

4. to を用いる等位型の文

Moja mama to lekarka.
  私の母医者です。
Moja mama と lekarka は両方主格単数

5. 感嘆文

Jakie(to jest)cudowne dziecko
  なんて可愛い子どもなんでしょう。
cudowne dziecko は主格単数

6. 前置詞や疑問文の jak の後ろ

Jaka temparatura jest dzisiaj?
  今日の気温は何度ですか?
temparatura は主格単数

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主格の格変化早見表
単数 複数
-(稀に-a) -y/i, -e
-a(稀に子音) -y/i, -e
-o, -e, -ę, -um -a

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生格 – Dopełniaczドペウニャチュ の用法

1. 所有、所属、部分や関係を表す

Gdzie jest torba mojej żony
  妻のカバンはどこにありますか?
主格単数…moja żona
 
Widziałem stado owiec.
  羊の群れを見ました。
主格複数…owica
 
基本的に、英語で所有を表す of や ‘s 、所有代名詞 which is/are (made by)などで結びつく(関係を表せる)単語は生格です。ただし、所有代名詞で表せる場合は主体と同じ格になります。

2. 特定の前置詞の後に来る

bez(e)…〜なしに、blisko…〜の近くに、dla…〜のために、do…〜まで/〜へ、naokołowokółdookoła…〜のまわりに、koło…〜のまわりに/およそ、obok…〜の隣に、od(e)…〜から/〜よりも、oprócz…〜の他に、podczas…〜の間に、pośródwśród…〜の中で、(po)mimo…〜にも関わらず、naprzeciw(ko)…〜の向かいに、spośród…〜の中から、u…〜のところで/〜の近くに、według…〜によると、wobec…〜を前にして/〜に対して、wskutek…〜の結果として、z(e)…〜から/〜のために、spod…〜の下から、sprzed…〜の前から、znad…〜の上から、zza…〜の後ろから、spomiędzy…〜の中から/〜の間から、zamiast…〜の代わりに

3. 特定の動詞の後に来る

bać się…怖がる、brakować…不足している、bronić…守る、chcieć…欲しい、dotykać…触れる、napić się…飲む、nauczyć się…学ぶ、nienawidzić…ひどく嫌う、oczekiwać…期待する、odmawiać…拒否する、pilnować…目を離さずにいる、potrzebować…必要とする、próbować…試す、pytać…尋ねる、słuchać…聞く、szukać…探す、unikać…避ける、używać…使う、wstydzić się…恥じる、wymagać…要求する、zabraniać…禁止する、zapomnieć…忘れる、zazdrościć…嫉妬する、życzyć…願う
 
※不完了体•完了体の区別なしで記載

4. 対格を取る他動詞を否定する場合

 肯定文で対格を取る他動詞は、否定文になると対格ではなく生格を取ります(否定生格)。
 
kupić…買う、dać…与える、widzieć…見る、słyszeć…聞く、słuchać…聴く、spotykać…会う、sprzedawać…売る、zabierać…取る、zabić…殺す、wyrzucać…捨てる

他動詞一覧(Wikipedia)

※ 他動詞のほとんどが対格(=否定形では生格)取ります。一部、生格(例:oczekiwać)や造格(例:rządzić)を取る他動詞があります。

5. 存在しないものを表す場合

Nie ma ◯◯◯生格 → ◯◯◯はない
Nie był(a/o)◯◯◯生格 → ◯◯◯はなかった
Nie będzie ◯◯◯生格 → ◯◯◯はないだろう
 
状態動詞 być を用いて “何かの存在” を否定する場合、動詞の後ろには生格が来ます。またこの用法での現在形 być の否定形は nie mieć(nie jest ではない)となるので注意しましょう。

6. 一部の形容詞を修飾する

 文中で補語となる形容詞 ciekawy, warty, bliski, chciwy, żądny, świadom(y), pozwabiony, godny のあとにさらに生格の形容詞を置くことで、後ろに来る形容詞は動詞のような働きをします。
 
On był bliski przewrócenia się.
  彼は転びそうになった。
基本形は przewrócenie

7. そのほかの用法

 重量、数量や測定値の後に来る名詞、5以上の人数や個数と合わせた名詞(数量生格)、いくつか/少しといった表現と合わせた名詞、一部の時間や時期を特定する表現は生格で表します。
 
Kupiłem 2 kg ziemniaków.
  じゃがいもを2キロ買いました。
主格複数…zimniaki
 
Mam 5 kotów.(2〜4匹なら4 koty)
  を5匹飼っています。
主格複数…koty(2〜4匹の koty は対格)
 
Dodaj trochę więcej soli.
  もう少しを足してください。
主格単数…sól
 
dziesiątego października…10月10日に
następnego lata…来年の夏に
Każdego roku/dnia…毎年、毎日
każdego ranka/lata…毎朝、毎夏
każdej nocy/razu…毎晩、毎回
Tego/tamtego dnia…この日、あの日
Tego/tamtego ranka…今朝、あの日の朝
Tej/tamtej nocy…今夜、あの日の夜
  ほか、popołud午後nia や połudn正午ia など
 
同じように時期や日付を表す場合でも、月/年/季節だけを言う場合は “w+前置格” を取ります。日にちだけの場合は生格のみでOK。

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生格の格変化早見表
単数 複数
-u, -a -ów, -y/i
-y/i -, -y/i
-a -, -y/i, ów

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与格 – Celownikツェロヴニク の用法

1. 間接目的語の役割

Kupiłam nową książkę mojemu dziecku.
  子どもに新しい本を買ってあげました。
主格単数…moje dziecko
 
Zwróć książkę nauczycielowi.
  本を先生に返しなさい。
主格単数…nauczyciel
 
誰かに何かをする、誰かに何かを与える、誰から何かが取られたり失われる場合、”誰かに” の部分は間接目的語=与格となります(何かをの部分は直接目的語=対格)。ただし、誰かのためを前置詞 dla で表す場合、後ろに来るのは生格です。

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暗記しておくと役に立つ与格
男性
(男性名詞)
女性
(女性名詞)
子ども
(中性名詞)
Jednemu
mężczyźnie
1人の男性に
jednej
kobiecie
1人の女性に
Jednemu
dziecku
1人の子どもに
dwóm2trzem3czterem4pięciu5sześciu6siedmiu7ośmiu8dziewięciu9/dziesię10ciu
mężczyznom kobietom dzieciom

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ちょっと、つぶやいていい?
アイコン 私がポーランド語を勉強しはじめた頃は格の用法について分かりやすくまとめられたサイトがありませんでした。私が日本語や英語で調べる限り…。詳しいものはあっても、難しかったらなかなか読み進められないですよね。なので、あの頃の自分に見せるつもりでまとめてみました!
ポーランド語の基本知識

 

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あやか
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6件のコメント

Chika より:

綾香さん 初めまして 私はショパンの大ファンでピアノを習っている者です。
綾香さんの 「ポーランド語は美しい言語で、音を綺麗に変換させてあげないといけない」というお考えに ショパンの美しい音楽とポーランド語の美しい響きが重ね合いました。

Ayaka より:

はじめまして、Chika さん!

ショパンの大ファンとのこと、最近公開した音楽についての記事は興味深く読んでいただけそうですね (*^^*)

ポーランド語の音変換は面倒に思われがちですが、ものも考えようです。
よりきれいに聞こえるためにどう発音するか、そういったことを細かく意識するのは音楽と重なる部分があるのかもしれませんね。

瀬畑 宏喜 より:

初めまして!
ポーランド語学習者でクラクフ在住の者です!

ここから先は有料ですと書かれていますが開いた先は別の記事になっていて格変化の説明を見ることが出来ません
是非有料でも構いませんのでリンク先の修正をお願いいたします!

はじめまして。
当ブログ管理人の綾香です。

ポーランド語学習お疲れさまです。
リンクの件ですが、手直しが必要な状態であえてリンク切れのようにしています。補足しておけばいいものの、申し訳ありません。
修正しなければならない記事が他に多くあり(記事が古くて内容を更新しなければならいもの)、こちらの記事はちょっと後回しになると思います。
完成時期が分からないのですが、もうしばらくお待ちください。

飛人 より:

始めまして。
綾香さんがおっしゃってた
7つの格はポーランドにしかないのですか?

ほかの言語のことは把握していないので分かりかねます。ほかにも7つの格や、それ以上の格を持つ言語はあるかもしれません。

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