鑑賞前に必読!『白貂を抱く貴婦人』の見どころ



※コンテンツの無断転載禁止(リンク歓迎)

 

前回の記事では、肖像画モデルのチェチーリアや絵画そのものの歴史についてお話ししました。背景を知った上で鑑賞する絵画は、さらに奥深いものです。

さて、ではこの絵画そのものにはどういった見方ができるのでしょうか。

約530年前に描かれた作品はやはり、今でも解き明かされていない謎が多いようです。それがまたミステリアスで、色んな想像を駆り立たせてくれますよね!

話題のクラクフ国立美術館について…基本情報まとめ

2017.04.25
.

『白貂を抱く貴婦人』

絵画の基本情報

制作者…レオナルド・ダ・ヴィンチ
制作年…1489年〜1490年
モデル…チェチーリア・ガッレラーニ
制作国…イタリア・ミラノ
種類 … 油彩
寸法 …54.8cm × 40.3cm

.
この肖像画のモデルとなった女性の名は、ミラノ公イル・モーロの愛妾だったチェチーリア・ガッレラーニ

描かれた当時、彼女は17歳であったことから貴婦人というよりは少女であることが分かります。白貂を胸に抱く女性の上半身は左方に向けられ、光が当たった表情には少女のあどけなさと気品、そして知性を感じることができます。

さて、この絵を見る上でまず注目していただきたいのは、少し奇妙なようにも感じられる女性と白貂の組み合わせ。

汚れた場所を嫌う白貂は純潔と節度の象徴とされ、同時に彼女を愛妾としていたイル・モーロの象徴でもありました。彼は1448年、ナポリ王より「白貂の勲章」を授かったと言われています。

また、白貂はギリシャ語で「ガレー(galee)」と発音するそうです。チェチーリアの姓である「ガッレラーニ」と語呂合わせになっているんですね!

白貂(アーミン)使用の王冠

ちなみに王様の肖像画で白いマントを被っている姿がよく見られますが、あれも白貂なんです。白貂の毛皮を所有する上流階級は、「その美しい毛皮が汚れるくらいなら死を選ぶ」と言ったとか。

中世のヨーロッパでは、白貂の冬毛(アーミン)は上質の毛皮とされており、貴族や王族は好んで衣装に用いました。

そこまで気品を感じられる動物が白貂というわけですが、その気品はどことなく彼女に通じるものがあります。

若く美しいチェチーリアは宮廷の花形であり、幼い頃から発揮される知性と教養は多くの文学者からも高く評価されていました。それが気品のある女性、つまりチェチーリアと重なったのでしょう。

あるいは、白貂がイル・モーロの象徴であることから、正妻ではなかったチェチーリアとの関係を肖像画の中で強く表した、ということなのかもしれません。

愛らしい小動物、フェレット

しかし、描かれているのは正確に言うと「白い被毛を持つフェレット」。

ここまで白貂である前提で話をしてきましたが、実はちがうんですね。個人的には、フェレットと貂を見比べてもこの描き方なら貂に近いと思うのですが…。

次に見るのは、白貂を抱いてる右手。

この右手、よーく見ると女性の右手にしては大きくて違和感があります。

ダ・ヴィンチ自身が二度にわたって右手を描き変えたそうなのですが、残念ながらその理由はよく分かっていません。

しかも、元々白貂は抱かれていなかった、いや、そもそも描かれていなかったのではないか?と言われています。

不自然と言えば、確かにそうかも?

絵を科学的に分析したところ、この白貂の下の層からはやや小ぶりに描かれた白貂の姿が浮かび上がってきたそう。

さらに、その下の層からは左手首に置かれただけの白貂が出てきたとか…。

一度完成したチェチーリアの肖像画を見直したダ・ヴィンチ自身が、あとから白貂を描き足したのだとすれば、その技量にも驚かずにはいられませんね。

しかし、真相は闇の中です。

また、この右手を観察すると爪や間接のしわまで精緻に描かれていることが分かります。しかし、美術館で鑑賞するときはさすがにそこまでハッキリ見えないので画像でじっくりご覧ください。

浮かび上がってきたような女性の姿

私が思うにこの絵の中で最もインパクトがあるのは、肌の白い美しい女性を際立たせるように塗られた黒の背景

不自然だと思いませんか。あまりにもコントラストが強すぎるような…。

実はこの黒の背景は誰かによって塗りつぶされたもので、元々は後ろに窓があったのでは?、という説があります。

または上の画像のように、まだらなグレーが塗られていたのではないかという有力な説も。のちに誰かによって塗りつぶされたのは確かですが、加筆どころか背景のみは完全にリメイクですね。

背景が黒く塗りつぶされてしまったために女性と背景の色合いに違和感が生じ、その結果、肌の色まで濃く見えるよう修正されています。頬はほんのりピンク色になり、鼻には影が加えられ、目元のあたりは若干明るくなりました。

こちらもよく観察すると加筆の後が…

女性の顔をよくご覧ください。

まるで、額縁の外で起こっている出来事にハッとしているような彼女の美しい表情は、またこちらをすぐに振り返ってきそうなほどの躍動感があります。

この斜めに描かれる肖像画は、ダ・ヴィンチが得意としていた絵画技法。

彼自身も「慎ましやかな女性を描くには、頭を下げるか、斜めに傾けるといった仕草がよい」と述べています。

ところで、女性の顔を観察すればするほど「いったいこの髪型はどうなっているんだ?!」と疑問を抱きませんか?

頬から顎へ髪が不自然に張りついているような印象を受けます。そして、誰が見てもすぐに分かるほどの加筆の跡。

これは、元々は薄いベールを頭に被っていたところを大げさな髪型に変えてしまったため、結果的に荒々しい修正となってしまったのだと考えられています。

Leonardo da Vinci

このように『白貂を抱く貴婦人』は加筆や修正がやや目立ちますが、ダ・ヴィンチによる女性の肖像画の中では最も美しく保存状態の良い作品です。

そこに疑いの余地はありません。

また、ダ・ヴィンチ自身もチェチーリアのことを「私の愛する女神」と呼んでいました。それほどまでに美しい女性が描かれていること自体、この絵に対する好奇心がさらに沸いてきます。

皆さんもぜひ、魅惑の名画『白貂を抱く貴婦人』を間近でご鑑賞ください!
.

今日のポーランド語

dama z łasiczką

dama z łasiczką(ダマ・ズィ・ワシチュコン)は、今回紹介した『白貂を抱く貴婦人』のポーランド語名。

“damska”(ダムスカ)という単語は日常的にもよく見られますが、これは「女性向けの、女性用の」といった意味です。トイレや試着室なんかではよく、”damska” と表記されていますね。”dama” はその名詞です。

 

最後までお読み頂きありがとうございます☆
あやか
この記事が役立ったら、イイネ!をお願いします。FBページではここには載せていないポーランド最新情報や注目の記事更新情報をお届けします ^^


Digiprove sealCopyright secured by Digiprove © 2017

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です