これからポーランドへ行く方が知っておきたい情報

ザモシチのココだけは見逃せない観光スポット6つ

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クラクフ市公認ガイドのカスプシュイック綾香(本名)です。2014年以降、ポーランド在住。ガイド・通訳業の傍ら、旅行や生活に欠かせないポーランド情報をお届け中!
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photo by flickr ポーランド外務省

前回の記事では、ザモシチという街の魅力について紹介しました。

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あまり知られていない観光地だけに、何気なく街を歩いただけでは「こんなものか、思ったより小さい街だな」という感想しか持たないでしょう。

この記事には、そんなザモシチをめいっぱい楽しむための情報が満載です!
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このページの目次
1. ザモシチの中央広場
2. 旧市街の外側に残る要塞
3. ザモイスキ宮殿
4. シナゴーグ
5. 聖トマス大聖堂
6. ザモイスキ博物館

 

ザモシチの中央広場

中央広場に位置する旧市庁舎
中央広場に位置する旧市庁舎

ポーランドの古い街には必ず rynek(リネック)と呼ばれる中央広場があり、そこには ratusz(ラトゥシュ)という旧市庁舎が建っています。中央広場はその名の通り、街の真ん中にある広場

ザモシチ中央広場の長さは約100m、この街の特徴であるイタリア・ルネサンス様式の建物が最も際立つ場所です。現在は、ほとんどがお土産さんやアートギャラリー、レストランになっています。

これらはかつて、金持ち商人や大学教授が所持していた建物でした。その中でも特に目を引くのは、カラフルな5つの建物「アルメニア商人の邸宅」です。

photo by flickr ポーランド外務省
photo by flickr ポーランド外務省
よく見るとこまかいレリーフが
よく見るとこまかいレリーフが
5番目の建物も
5番目の「マドンナの下の家」

旧市庁舎側の緑の建物から見どころとちょっとしたエピソードを紹介します。
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  • ヴェリチェックの家
    ヤン・ヴェリチェックという、かつての町会議員の名字を取ってこう名付けられました。まるでこの建物が自分の所有物であることを自慢するかのように、彼自身のイニシャルが表面に4つも取り付けられています。中央広場に面する部分には、洗礼者ヨハネやイエスの洗礼場面のレリーフがあります。
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  • ルドミチュの家
    作家でもあり、ザモイスキ・アカデミーの教授でもあったバゼリ・ルドミチュが所有した家。ルドミチュは17世紀に活躍した人物で、ザモシチでの毎日の生活を綴った日記を16年間も書き続けたことで知られています。
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  • 天使の下の家
    大天使ガブリエルのレリーフがあることから、このように名付けられました。また、この家を立てたのはガブリエル・バルトシェヴィチュという金持ちのアルメニア商人であり、大天使ガブリエルは彼の守護天使だったそうです。3階部分にある2匹のライオンとドラゴンのレリーフが見物。ライオンはこの家を守っており、ドラゴンは邪悪な生き物を表します。
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  • 夫婦の下の家
    男と女を表すレリーフがあり、それはこの家に住んでいたある夫婦を象徴しています。伝説によると、口うるさい妻に耐えられなくなった夫が「この女は魔女だ」と言って、妻を火あぶりにしたそう。その時の「ざまあみろ」という悪い顔をした男の顔が見物です。これは、単なる伝説にすぎないでしょう。しかし、ポーランドでは一般的に「魔女狩り」はなかったと言われますが、ザモシチでは「女性が魔女呼ばわりされて火あぶりの刑になったことがある」という記録が残っています。
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  • マドンナの下の家(白)
    赤ん坊のイエスを抱いた聖母マリアのレリーフがあることから、このように名付けられました。聖母マリアがドラゴンの上に立っている姿が特徴的です。表面のSSというイニシャルは、金持ちのアルメニア商人ソウタン・サフヴェロヴィチュのイニシャルで、この家の建設者でもありました。

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前面の花壇がよく映えます
photo by ポーランド外務省

こちらは、52mの高さの塔を持つ旧市庁舎。とても美しいですよね。

旧市庁舎は16世紀後半から17世紀にかけて建設され、18世紀に階段が加えられました。一見均等に見える左右のバランスですが、よく見ると左側は右側より130センチ長くなっています

夏限定ですが、正午になると搭からラッパ吹きが現れ、3つの方角に向けて時報を鳴らします。噂によると、この街の建設者であるヤン・ザモイスキはクラクフを嫌っていたそうでその方角にラッパを吹くことを許さなかったのだとか。

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現在、旧市庁舎は観光案内所になっています。ザモシチに着いたら、まずここで一休みして地図をゲットしましょう。

 

旧市街の外側に残る要塞

ザモシチ旧市街を囲む壁
ザモシチ旧市街を囲む壁や橋

この街にクラクフよりも完璧な部分があるとすれば、それは旧市街を取り囲む市壁や橋、門、砦などがまだ残っているという点ではないでしょうか。

上の写真は「ルベルスカの門」といい、1821年と1822年に建設された新しい2つの門の内の1つです。

木造の橋の前には、旧約聖書に出てくる「ダビデ王の像」があります。この像は、ホロコーストの犠牲となった、当時ザモシチに住んでいたユダヤ人達を追悼するために置かれました。

旧市街への入り口 旧ルヴォフスカ門
旧市街への入り口 旧ルヴォフスカ門
門をくぐって右手にあるこの建物が要塞
門をくぐって右手にある要塞
レンガ造りの立派な砦
レンガ造りの立派な要塞
こんな人形が至るところに…
こんな人形が至るところに…
大砲が打てちゃいます
なんと、大砲が打てちゃいます

現在見ることのできる4つの砦の内、最も立派なものがこちら。

7番目に造られたこの砦は、駅方面か最も近い旧ルヴォフスカ門をくぐったところ右手内部に見ることができます。

1825年〜1830年の間に建設されましたが、1866年に取り壊されてしまいました。現在のものは、1970年代と80年代に復元されたものです。

最後の写真は、ある家族が大砲(カノン砲)を打っているようす。

2016年8月に撮影した料金表
2016年8月に撮影した料金表

大きい大砲は80PLN、中くらいの大砲は40PLN、小さい大砲は30PLNで打つことができます(2016年8月時点)。他にも、5PLNから中世の武器を体験することが可能

ちなみに旧ルヴォフスカ門は1600年頃に建設されたもので、ザモイスキ家の紋章を見ることができます。そのすぐ隣には「ウカシニスキの牢獄」の跡があり、ここには1824年から1825年の1年間だけ囚人がいたそうです。

 

ザモイスキ宮殿

photo by eholiday.pl
photo by eholiday.pl

ザモイスキ宮殿(Pałac Zamoyskich)は、その名からも想像がつく通り、ザモシチ建設者ヤン・ザモイスキと彼の家族が居住していた宮殿です。

宮殿は1579年〜1586年にかけて建設されましたが、ザモシチの建設は1580年に始まったので1番最初に手がけられた建物ともいえます。当時はもっと小さく、旧市庁舎のように階段が両側に広がっており、塔もあったそう。

改築される前のザモイスキ宮殿
改築される前のザモイスキ宮殿

実は、ザモイスキ宮殿と呼ばれる場所はポーランドに6つもあります。

ザモシチにある宮殿はその内の1つに過ぎません。すべてザモイスキ家が所有した ものなので、やはりとんでもなくお金持ちだったようですね。ただしザモシチの宮殿も含め、そのほとんどは現在内部の一般公開をしていません。

住所:ul. Akademicka 1, Zamość,
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ちょっとしたこぼれ話

ところで、女好きで知られるヤン・ザモイスキの孫、ヤン・ソビエパン・ザモイスキは、街を歩く女性を宮殿から眺めるのが大好きだったとか(笑)。

しかし彼は女性と同じくらいポーランドを愛しており、スウェーデン軍がザモシチに侵略してきた時は毅然(きぜん)とした態度で「お前達にザモシチを明け渡すつもりなどこれっぽちもない」と自慢の軍事力をもって追い払うことに成功したそうです。

調べていて分かったのですが、彼はマリア・カジミェラと結婚し2人の子どもをもうけていました。その後、カジミェラは国王ヤン3世ソビエスキと再婚します。こんなところでソビエスキと繋がっていたとは、驚きです!

 

シナゴーグ

ザモシチの歴史あるシナゴーグ
ザモシチの歴史あるシナゴーグ

1610年に建設されたこのシナゴーグも、ザモシチの伝統ある建築物です。

シナゴーグとはユダヤ教の会堂を指し、ユダヤ教徒の祈りの場所です。なんとザモシチには、第一次世界大戦直後の統計によると68%ものユダヤ人が住んでいたとか。今は1人も住んでいません。

ただこの数字にはからくりがあって、当時のポーランドでは独立のために多くのポーランド人がロシア軍との戦いで命を落としていました。そのためポーランド人の人口が急激に減り、ユダヤ人の方が目立つようになったのです。

ポーランドの歴史
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現在は博物館となっています
内部はユダヤ歴史博物館となっています

メインホールの他に、男性が祈る場所と小さな女性用ホールが2つあります。

第二次世界大戦で攻撃を受けましたが、1970年代には完全に復元されました。内部は博物館となっており、ザモシチに住んでいたユダヤ人の歴史やポーランドにおけるユダヤの歴史をよく知ることができます(英語での説明あり)。

住所:ul. Ludwika Zamenhofa 9, Zamość

 

聖トマス大聖堂

中央広場から徒歩3分
ザモイスキの遺骨が眠る大聖堂

大聖堂もザモシチ観光では絶対に見逃すことのできないスポットの1つです。

大聖堂は1587年〜1598年にかけて建設され、内部の装飾が完全に仕上がったのは1630年のことでした。

1824年から2年にわたって大規模な改築が行われていますが、第二次世界大戦で破壊を免れておりほぼ19世紀当時の姿で見ることができます。

大改築が行われたのは当時、ポーランドがロシアに占領されていたことと大きく関わっています。その時はザモイスキ家の紋章すらも取り除かれました。

不思議な模様の美しい天井
不思議な模様の美しい天井

大聖堂にある礼拝堂(カトリック教会に見られる、側面にある小さな部屋)の内、8つはザモイスキ家のものです。

その1つにヤン・ザモイスキの墓碑があり、壁には彼の絵があります。大聖堂はザモイスキ家の霊廟でもあり、いうならばクラクフにあるヴァヴェル大聖堂の王族墓所と似たような存在でしょう。

ヴァヴェル城
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大聖堂の隣にあるベルタワー
大聖堂の隣にあるベルタワー

こちらは18世紀に大聖堂の隣に建設されたベルタワー。高さは47m、旧市庁舎よりも5m低いだけです。

ベルタワーには3つの鐘があり、それぞれにヴァヴジェニエツ、トマシュ、ヤンという名前が付けられています。これらは今でも見られるポーランド人男性の名前。その中でもヤンは重量4.3トン、ポーランドで最も大きい鐘の1つです。

大聖堂のベルタワーから撮影
大聖堂のベルタワーから撮影

夏限定で上ることができるのですが、上から見る中央広場の景色は美しく最高でした!あと、もう20mくらいあればもっと素晴らしいに違いありません。

そういえばベルタワーを下っていく時、銃声よりも重い音が聞こえて心臓がドキドキしたのをよく覚えています。

あれは事件だと思いましたね。なにか爆発でもあったのかと警戒しましたが、下のチケットを売っているお兄さんは何食わぬ顔。ザモシチにはそういう習わしがあるのかとすぐ理解できましたが、あの爆音はかなり心臓に悪いと思います。

伝統的にを発射している
伝統的な姿で銃弾を撃っています

7月1日〜8月31日の17時限定で行っているそうですが、その最初の一発目は大聖堂付近から始まります。

もちろん空撃ちですが、本当にビックリするのでこの期間にザモシチへ行く方はよく覚えておきましょう。そして上の写真の格好をした人々が現れたらすかさず耳をふさいで避難しましょう…。

住所:ul. Kolegiacka 1A, Zamość

 

ザモイスキ博物館

ザモシチの歴史を視覚で学べます
ザモシチのすべてがここに集結

ザモシチにはこれといって興味深い博物館が幾つもあるわけではないのですが、だからこそこの博物館は外せません。

英語の説明文はなくポーランド語のみですが、大丈夫。数多くの展示品を見るだけで「ほおー」となること間違いなしです。博物館は結構広いのでゆっくり見学すれば40分近くかかりそう。見どころがたくさんありました。

周辺地方の民族衣装もズラリ
周辺地方の民族衣装もズラリ
右側に初代国家元首のピウスツキ
右側に初代国家元首のピウスツキ
中世のザモシチ旧市街モデル
中世のザモシチ旧市街モデル

私は閉館30分前、ギリギリに入ったためじっくり見ることが出来なかったのですが、それは今回のザモシチ日帰り観光において最も悔やまれることでした。

また、この博物館は中央広場にある「アルメニア商人の邸宅」の5番目、「マドンナの下の家」の中にあります。

そこに入れるというだけでも面白いですし、内部の装飾もルネサンスで一見の価値があるのでとてもおすすめです!

住所:ul. Ormiańska 30, Zamość
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今日のポーランド語

kompaktowy

kompaktowy(コンパクトヴェ)は、「コンパクトな/小さな」という意味の形容詞です。

注意したいのは “kompakt” という単語。英語でも “compact” という単語があるので大変紛らわしいですが、”kompakt” だとCDやCDプレーヤーを指します。しかも、頻出度は低いので「コンパクトってなに?」と言いだすポーランド人もいるでしょう。

 

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あやか
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