ヴィエニャフスキ・コンクールでのお仕事 後編



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前回の記事続きです。この記事1本でうまく最後まで納まりますように。

ヴィエニャフスキ・コンクールでのお仕事 前編

2016.10.23
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それでは、いよいよ第15回ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン・コンクールの幕開けです。コンクール密着取材ではないのでコンクール情報満載ではありませんが、その点はご了承ください。

 

9日 第一次予選スタート

最初に演奏したのは、服部百音。

緊張しているのが客席からも伝わってきますが、それはもう仕方ありません。

前日、彼女が練習する姿を見て「こういうレベルの人が競い合うコンクールなんて想像つかない」と思いました。音楽は深いとしか言いようがない。

スポーツだと素人でもハッキリと目に見える結果があります。でも音楽は聴く人によって持つ感想が異なります

誰も1位のマラソン選手を見て「あの選手は足が遅い」なんて言いません。しかし、それが途端に音楽となると歌手でも演奏家でも急に色んな方面から批判されやすくなる。そんな厳しい世界で腕を磨く音楽家達を素直に尊敬します。

他の観客が彼女の演奏をどう感じたか、それはFBや Youtube での再生回数や感想を見ても一目瞭然でした。

演奏時間は、なんと50分間。

もう鳥肌が立つどころかそれを感じる間もなく聴き入ってしまいました。

昨日のインタビューで聞いた彼女のヴァイオリン生活やそれに懸ける思いを知ってしまっただけあって、もう涙が出そうなくらいの素晴らしい演奏です。

皆さんもぜひ彼女の演奏を聴いてみてください。19分25秒から注目!

 

第一次予選の評価

服部百音を追いかけることがメインだったので、他の方の演奏はあまり聴いていません。これはちょっと残念。

コンクール中は何度でも出入りできたのですが、私たちはコンクールを密着していたわけではありません。それはポーランド国営局の仕事。だから極端な話、私自身は最初と最後(服部と岡本)しかまともに会場で聴いていないんです。

まず服部の演奏は、耳だけでなく目でも見入ってしまうものがありました。

そんなこと出来るの?!と、驚く技があったのです。他の方の感想も見ると「彼女の指はどうなっているの?」「多くのヴァイオリニストが出来ないことを彼女は平気でやっている」「すべてにおいて挑戦している」というコメントが。

あ、やっぱりそうなんですね…。

他のヴァイオリニストも YouTube で聴いてみると同じようなことをやっていましたが、彼女が技術的にかなり優れたヴァイオリニストというのは一目瞭然。

こちらは最後に演奏した岡本誠司の写真ですが、ちょっとこれじゃ小さすぎて誰か分かりませんね(汗)。

で、私の率直な感想ですが、本当にド素人が言うことなので聞き流して頂ければと思いますが、彼の演奏に心打たれつつもハッとする部分はなかったです。

あの会場の長い拍手も「選曲がどれも華やかで、観客の耳に響きやすかったんだろう」とすら思ってしまいました。

なにも彼の演奏そのものにケチを付けているわけではないのですが、あれほどまでに服部の演奏には「コンクールへの挑戦」が大きく感じられたのに、彼の演奏はコンサートでの素晴らしい演奏のように聴こえてしまったのです。

もし、「なにも分かっちゃいない!」と思われたのなら大変失礼しました。

 

出場者とのインタビュー

日本人数人のインタビューでは、印象に残るエピソードがやはりありました。

まず服部ですが、彼女は5歳でヴァイオリンを始め8歳でオーケストラと共演し、これまでのコンクールではすべて1位(ヴィエニャフスキで記録は破られましたが)という超強者です。

そんな誰もが認める彼女のヴァイオリニストとしての素質ですが、最初から才能を見せていたわけではありません。

ピアノの世界では「2歳からピアノを弾いている」なんていうピアニストはゴロゴロいるようですが、ヴァイオリンの世界でもそれは一緒。しかし、彼女は5歳からという遅めのスタートでした。

お母さんのエリさんは3歳から習わそうとしていたそうですが、骨折や皮膚の弱さもあって二度断念し、「ああ、この子はヴァイオリンには向いていないんだな」と思ったことすらあったとか。

しかし、彼女の方からヴァイオリンに興味を持つようになり、5歳から本格的にヴァイオリンを始めました。

今でも石けんには気を付けなければならないほど、肌が弱いそうです。そんな彼女だからか、首にあるヴァイオリンによるアザは、他の演奏者のそれよりも目立つものでとても痛々しい…。

ヴァイオリンを弾く時以外は、笑顔も見せれば泣き顔も見せるふつうの17歳の女の子…と思いきや、「漫画の読み方が分からない」という言葉を聞いて、やっぱり違うと思ったのでした(笑)。

それほど一般的な高校生とは、かけ離れた生活を送っているのでしょうね。

こちらは2日目の寺内詩織。

私は彼女の演奏に遅れて到着したため、生で聴くことはできませんでした。後から知った話、演奏中でも入ることができたそうです。見張りの人がうろうろしていたので、てっきりダメなのかと。

寺内はある難病を抱えていて、今回のコンクールに懸けた思いもまた違うように感じられました。リハビリでうまく練習できない期間も長かったようで、それでもこの世界的なコンクールに挑んでいるというのには驚きを隠せません。

彼女曰く最後の方は体力がもたなかったそう。しかし、私にはどこのことを言っているのか分からないくらい完璧なものに思えました。素晴らしいです。

とにかく寺内の演奏は高い音もスッと耳に入ってきて、あれが私にとっての感動で謎。ヴァイオリンによってあれほど音色がちがうものなのでしょうか。

また寺内は、治療に専念するためか去年のエリザベート王妃国際コンクールを辞退していたようです。このコンクールで、彼女の力が悔いなく発揮できるよう願ったのは言うまでもありません。

 

外国語での初インタビュー

写真の彼女( Amelia Hall/ニージランド)にもインタビューしました。

さすが外国人のノリというか爽やかにインタビューに応じてくれたのですが、緊張していたので肝心の内容は忘れてしまいました(笑)。あ、ニュージーランド人の英語はクセがなかったです!

国営局のインタビューも聞いて気付いたのは、出場者のほとんどが「このコンクールに出場できたという事実だけでも喜ばしい」と感じていること。

一人、アメリカ出身の中国人で「僕の演奏聴いた?!もう完璧だったでしょ!」みたいな自信過剰な出場者もいましたが、皆さんすごく謙虚な姿勢でした。

Tchumburidze Veriko トルコ

Tchumburidze Veriko トルコ

Welonika Dziadek ポーランド

Welonika Dziadek ポーランド

韓国

Kim Bomsori 韓国

観客のポーランド人の女の子2人にもインタビューしました。

彼女達は音楽学校の学生だそうで、忙しい授業の合間をぬってコンクールにやってきたとのこと。ポーランド語だと番組側があとで訳する時に少し手間がかかるので英語でのインタビューの方がいいのですが、彼女達は英語NGでした。

ヴィエニャフスキは地元市民にとってどういう存在か、このコンクールでは誰に注目しているかなど、そういうことを聞いたような気がします。一つの質問に対してたっぷり答えてくれました。

彼女達は「楽曲までは知らなくても、ポーランド人なら誰でもヴィエニャフスキを知っている」と答えていましたが、あとから知るところによると決してそうでもないようです。ポズナン市民や、音楽学校の生徒にとっては常識でも…。

 

12日 第一次予選の結果

12日の21時30分、9日〜12日の第一次予選の結果発表がありました。

41人から26人へと絞られ、6人の日本人が残るという結果に。日本、強すぎる!本当なら半分で20人くらいは落とされそうなところで、26人も残ったというのは第15回のコンクールのレベルの高さを物語っている気がします。

5人足りませんが、第一次予選を通過した出場者達の集合写真です。

まさか通過者の名前が演奏順に呼ばれていくとは思わず(カタログの順だと思っていた)、最初に服部の名前が呼ばれた時はちょっとビックリ。ちなみに私は流れが掴めない場合に訳する者として、百音ちゃんのマネージャーさんとお母さんのエリさんの間に座っていました。

通過者の発表中「カタログの番号で!」と叫ばれていたにも関わらず、発表者はただ名前を繰り返すだけ。マネージャーさんもメモを取るのが大変そうでした。

翌日からさっそく第二次予選が始まりますが、私もディレクターさんもマネージャーさんも服部の演奏が終わり次第すぐ現場を離れることになります。

13日で最初のロケは一旦終了、次回は19日〜24日。まあ、これは結局なくなったのですが、詳しくは次の記事でお伝えしましょう。それにしても残念!

 

本当に楽しい一週間でした

まさかの舟盛りでやってきた

まさかの舟盛りでやってきた

通訳以外は、タクシーを呼んだり、食事するお店を選んだり、それくらいだったような気がします。想像していたものより、ポズナン滞在期間中にストレスを感じることはありませんでした

マネージャーさんもご一緒して夕食を食べ、飲み歩いた日は、業界話も聞けて色々おいしかったです。

なにより親しみやすい方に囲まれてのお仕事だったので、第2弾ロケもとっても楽しみにしていました。お互いに第2弾は絶対あると思っていました。。。

コンクールの観客用チケット

コンクールの観客用チケット

そうそう。いつもスタッフカードで自由に出入りしていましたが、最後の日はチケットを買っていただきました。

そして、その値段に驚愕。

なんと10PLN(270円)だったのです!場所によるでしょうし、ファイナルではもっとすると思いますが、まさかこんなに安いとは…。ショパンコンクールだったら、第一次予選でもここまで激安ではないですよね?(^ ^;)

最初は「正装を用意してください」と言われてスーツを用意したにも関わらず、結局必要なかったのも頷けます。まったく敷居は高くありません。こういう情報こそ、前もって欲しかったなぁ…。

次回の記事では、きっと皆さんが最も気になっているであろう、コンクールのスキャンダルに迫っていきましょう。

第15回ヴィエニャフスキ・コンクールの実態を暴く

2016.10.25
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今日のポーランド語

wynik

wynik(ヴィニク)は「結果」という意味です。wyniki(ヴィニキ)と複数形で使う場面も多いので注意。

“wyniki 1 etapu”(ヴェニキ  ピエルフシェゴ  エタプ)で「第一次ステージの結果」となりますが、”wynik” としても間違いではありません。しかし、結果が複数ある場合は複数形を用いるのがより自然な形だといえます。

 

最後までお読み頂きありがとうございます☆
あやか
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