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【音声学の超基本】これを知っていればポーランド語が驚くほど上達する!

ポーランド語 発音の基本
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クラクフ市公認ガイドのカスプシュイック綾香(本名)です。2014年以降、ポーランド在住。ガイド・通訳業の傍ら、旅行や生活に欠かせないポーランド情報をお届け中!
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この記事の内容
 外国語を正しく発音するためには音声学の知識が必須。でも、すべてを把握しなくても大丈夫!私は音声学を少しかじった程度ですが、ポーランド語と並行して勉強していくうちに【発音や格変化の子音交替で謎だった】部分が解けてとてもスッキリしました
 
 発音練習は音声ルールを学習してからやったほうが絶対に効率がいいです。当記事では私が知っている限りの音声学知識を分かりやすく解説するので、ポーランド語や外国語の発音練習にお役立てください。長くなるので、具体的な発音方法は 別の記事で説明します。
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勉強する女の子
この記事の目次
発音するための基本の器官5つ
ポーランド語の硬子音と軟子音
  硬子音と軟子音一覧
  硬化子音と軟化子音

特別な音を持つ母音 i と y
  非口蓋化音と口蓋化音
ポーランド語の共鳴音と阻害音
  共鳴音ってどんな音?
  阻害音ってどんな音?
  共鳴音と阻害音のまとめ

つづりとは異なる発音(例外)
  有声音の無声化の例
  無声音の有声化の例
  有声音と無声音の対応表

その他、うまく発音するコツ5つ
この記事のまとめ
ポーランド語は超難解言語ではありません!まず知っておきたい5つの特徴

 
【注意】私の音声学の知識は独学で得たものです。参考程度にお読みください。おかしな表現や、間違いがあればご指摘をお願いします。

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発音するための基本の器官5つ

口腔断面図

 音を正しく発音するためにはまず、口腔内のしくみを知っておかなければなりません。

 ということで、かんたんな口断腔面図(上の画像)を作成してみました。
本格的な断面図はもっとごちゃごちゃしていますが、今回のように音声学のさわりだけを学ぶならこの簡易バージョンでも十分です。

 専門用語なのでどうしても難しく見えてしまいますが、意味をちゃんと把握すればたいして難しいことではないと分かるでしょう
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基本の器官5つの用語解説

口唇こうしん……唇のこと。唇は上唇と下唇の2つあるが、特にこの2つを意識する場合は両唇りょうしんという。

鼻腔びくう……鼻のあなの中をいい、ある発音(マ行やナ行)ではこの鼻腔を使って音をつくる。

声帯せいたい……人は、のど元の声帯を開けたり閉じたり、振動させながら音を調節して発声する。

硬口蓋こうこうがい図の硬口蓋の部分を舌で触れると硬く感じられる。前部にいくほど硬くなるのが特徴。

軟口蓋なんこうがい硬口蓋よりも奥を舌で触れると軟らかく感じられる。後部にいくほど軟らかいのが特徴。

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あやか
大声を出しすぎたり、カラオケで歌いすぎると声が枯れたりするけど、それはまさに声帯を傷めていることによる炎症。

 

ポーランド語の硬子音と軟子音

口腔断面図

 最初に紹介する硬子音こうしいん」と「軟子音なんしいん」は、ポーランド語においては超重要

 硬子音は舌が口蓋こうがい(口腔内の天井部分)に向かって盛り上がらない音で、その逆として軟子音は舌が盛り上がる音になります。

 声は出さなくても構わないので、「あいうえお」と口を動かしてみてください。
意識すれば分かりますが、「い」のときだけ中央の舌が硬口蓋こうこうがいに接近したと思います。

 このイの音を帯びて発音される音を軟子音であり、ローマ字で書く際に “i” がある音や “y” の音を持つ拗音ようおん(次項で説明)はすべて軟子音、それ以外の子音は硬子音です。
つづりを見れば、すぐ見分けられますね
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硬子音こうしいん軟子音なんしいん一覧



p, b, t, d, k, g, f, w,s, z, ch/h, m, n, ł,
sz, ż/rz, c, dz, cz, , l


ś, ź, ć, dź, ń, j, pi, bi, fi, wi, mi,
gi, ki, chi/hi

▲(赤字は硬/軟化子音 後述)
※ ś の´は i の音。よって、ś は si とも表記可

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硬化子音こうかしいん軟化子音なんかしいん

 現代ポーランド語のすべての子音は硬子音か軟子音のどちらかに分類できますが、さらに細かく言うと、硬化子音(昔は軟子音だったが現在は硬子音)と軟化子音(昔は硬子音だったが現在は軟子音)があります。たまに格変化で「硬子音なのになんで軟子音と同じように変化するんだろう」と思うことがあるでしょう。そういうときはたいてい語幹が硬/軟化子音。日本語にもこのように時を経て発音が変わってしまった音はたくさんあります。

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あやか
硬子音や軟子音に母音が付くと、硬音/軟音と呼ばれることがあるよ。(例:pa, pu, pe, po は硬音、pi は軟音)。
ポーランド語のアルファベット

 

特別な音を持つ母音 i と y

拗音とは

 母音である i と y(ポーランド語では y も母音)の付く音を「軟子音なんしいん」と呼びますが、実はこれらの音は母音の中でも特殊

 日本語の拗音ようおんはイ段に小さいヤ行を加えた音(きゃ/きゅ/きょ…)です。

 これらを日本式または訓令式ローマ字で書くと kya/kyu/kyo…(子音+y+母音)となりますが、ここからも y は特別な音であることが分かるのではないでしょうか。

 大きなポイントは、子音と母音に挟まれた i や y は母音ではないということ。
イの音に変化(軟化)させる役割を持つ記号であり、拗音を表す印だと捉えましょう。
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非口蓋化音ひこうがいかおん口蓋化音こうがいかおん

 音声学的に硬音は非口蓋化音、軟音は口蓋化音といい、口蓋化こうがいかとは舌が硬口蓋こうこうがいに向かって盛り上がる現象です。口蓋化音=イ段の音/拗音ようおんに対立する音は、非口蓋化音である直音(カ/ク/ケ/コなど)。つまり、日本式ローマ字では i や y で口蓋化音であることを表しています!さらに言うと、ポーランド語での拗音ようおんは口蓋化音(イ段の音)を含みます。そのため mieszkanie(アパート)の正しい読み方は「ミエシュカニエ」や「ミエシュカニェ」ではなく、「ミェシュカニェ」です。

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ちょっとこぼれ話

 古代ポーランド語は、日本語のように母音のみと子音+母音の音だったという説があります。それが時を経て母音の脱落現象が重なり、子音の多い言語となったとか。ただ子音ばかりの音は聞こえづらいので軟音化し、結果的に拗音に置き換えられました。学習中「この格変化、元のかたちと随分ちがうなぁ」というケースでは脱落が関係している可能性アリ。また、「エ」も口蓋化が起こりやすく、脱落現象もあれば出没現象もあります。

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あやか
日本語で “あした” と言うと “し” はささやき声になりがち。これは子音のみを発音しているからで、まさに脱落現象!
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ポーランド語の共鳴音と阻害音

子音の分け方

 子音は硬子音こうしいん軟子音なんしいんに分けられる一方、共鳴音と阻害音という分け方もあります。

 共鳴音は、声帯が振動する音を声道内で共鳴させることによって作られる音の総称(要するに、濁点の付かない音が共鳴音)。
共鳴音は m, mi, n, ń/ni, r, l, ł, j となり、さらに鼻音、流音、半母音に分けられます。

 阻害音(妨げ音)は、共鳴音の反対で気流の妨害によって作られる音です。
阻害音は p, b, t, d, k, g, f, w… と共鳴音よりも多く、閉鎖音、摩擦音、破擦音はさつおんまたは有声音と無声音の2パターンに分けられます。

 イメージ的には、共鳴音はまるくて親しみを感じられる音、阻害音は角ばっていて荒っぽく聞こえる音(濁音)とよく言われます。
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共鳴音ってどんな音?

鼻音 m, n

 鼻腔に気流を通して発音する音。鼻をつまみながら、マ行やナ行を発音するとこもった感じになります。これは鼻をつまむことによって鼻腔に気流が通らず鼻から息を出せないからです。

流音 r, l

 流音はもともと鼻音も含む音を指していましたが、現在では音声学的に分けてるというより単純に r と l を指します。r は舌を浮かせた状態、l は 舌先が上の前歯の裏に付いた状態で出す「ラ」。

半母音 ł, j

日本語ではヤ行とワ行が半母音。発音方法は母音に近いが子音的な性質を持つ音です。母音が連続すると実際の発音と異なる場合がある(言う/iu→ゆー/ju)のは半母音の影響を受けているから。

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阻害音ってどんな音?

破裂音 p, b, t, d, k, g

 「パ/バ」は、上唇と下唇を閉じた瞬間に開けて発音します。「タ/ダ」は、舌先に歯の裏側を付けその瞬間に離して発音します。このように上下部分がそれぞれ接近もしくは接触し、鼻腔への通路が閉じらることで発生する音が破裂音です。

摩擦音 f, w, s, z, sz, ż, rz, ch/h

 破裂音は閉鎖によって音をつくりますが、摩擦音は閉鎖をつくらない程度に声門から口腔内のどこかの器官を狭めて生じさせる音。破裂音が1回1回閉鎖を行わないと発せられないのに対し、摩擦音は息が続く限り連続して音を発せられます。

破擦音 c, dz, cz, dż

 破裂音と摩擦音を合わせたものが破擦音。破裂音と摩擦音のように上下の調音器官で呼気を止め、それと同時に摩擦音のように器官を狭めることによって生じます。動きを観察するようにゆっくり「ツ/ジュ」と発音してみると分かるでしょう。

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 阻害音には対となる有声音と無声音があります。喉(声帯付近)に手を当てたときに喉元が震えていれば有声音、震えていなければ無声音。ただ、日本語は子音だけを発音することがあまりないので普通に発声すると(母音は有声音のため)声帯が振動します。ささやくように「しーっ」と言ってみると声帯が振動せず、無声音だと分かります。
 一方、共鳴音は有声音ですが、無声音との対はありません(発声時に無声化することはある)。

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共鳴音と阻害音のまとめ



m, m'(mi), n, n'(ni), r, l, ł, j


p, pi, b, bi, t, d, k, ki, g, gi, f, fi,
w, wi, s, ś(si), z, ź(zi), sz, ż=rz, ch=h,
c, ć(ci), dz, cz, dż, dź=dzi
阻害音:有声音と無声音の対応
p t k f s sz c cz ć
b d g w z ż dz

※濁点が付く子音が有声音
※ch=hは有声音の前では有声化する特殊無声音

あやか
平安時代まで日本語のハ行の対はパ行だったらしいよ。日本語の場合、音が変化してハの対がバになったということ。

 

つづりとは異なる発音(例外)

日本語でいう連濁

 ポーランド語は、全36音の読み方さえ覚えていれば規則的に読むことができる言語(逆に英語は発音記号を見ないといけない)。

 しかし、実際のつづりとは違うように発音される単語も少なからず存在します。

 これは子音の同化といい、次につづく音に影響されて有声子音が無声化(はっきり聞こえなかったり、半濁音になる)したり、無声子音が有声化(濁音になる)する現象です。

 日本語でも連濁れんだく(無声音の有声化)といって、複数の語が結びついて一語になる際に後ろの語が濁音になるケースがあります。
ただし読み方が変わってもつづりが同じであるため、例外として覚えるしかありません
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有声音の無声化の例

twarógチーズの一種 – トゥファルク(つづりは “トファルグ)
łóżkoベッド – ウシュコ(つづりは “ウジュコ”)
chwila少しの間 – フフィラ(つづりは “フヴィラ”)
chlebパン – フレプ(つづりは “フレブ”)
jabłkoりんご – ヤプコ(ゆっくりなら “ヤブゥコ”)
kładka歩道橋 – クワトゥカ(つづりは “クワドゥカ”)

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無声音の有声化の例

prośba要求 – プロジバ(つづりは “プロジバ”)
liczba – リヂュバ(つづりは “リチュバ”)
także〜も – タグジェ(つづりは “タクジェ”)
jakbyもし – ヤグベ(つづりは “ヤクベ”)

※無声音の有声化はあまり見られない
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有声音と無声音の対応表

阻害音:有声音と無声音の対応
p t k f s sz c cz ć
b d g w z ż dz

※日本語での有声音 ナラマワガザダバ行
※日本語での無声音 カサタハパ行

あやか
発音が変わるのは言語が生きている証拠。人が話しているからこそ、発音しやすいよう言葉も変化していくってことだね。

 

その他、うまく発音するコツ5つ

ここまでのまとめ

 ここまでで紹介してきた以上のことを除き、下記5点も把握しておくと◎。

 ❶は発音ルールの中でも超基本事項なので必ず押さえておく必要がありますが、❷以降に関しては意識しすぎないでください
おそらく、ポーランド語を覚えていくうちに自然に身につけることができるでしょう。
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ch, szシュ, rzジュ, czチュ, dz, , ジュ はそれぞれ1文字である。別々で発音しないこと。
子音に挟まれた ł は発音しなくてもOK。
例:jabłkoりんご △ヤプゥコ ○ヤプコ
語末の ł は発音しないほうが自然な場合もある。ただし、過去形を表す ł は発音する。
同じ子音が続く場合は、分けて発音する。例:lekko軽い ×レッコ ○レクコ
ci, si, zi, dzi, ni が母音の前にある時(日本式ローマ字の子音+y+a/u/oのy)は、i は軟音化を表す記号なので i をハッキリと発音しない。
例:ciastkoケーキ ×チアストコ ○チャストコ

ポーランド語のアルファベット
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この記事のまとめ
アイコン 硬口蓋こうこうがい軟子音なんしいん口蓋化こうがいかといった専門用語がたくさん出てきましたが、語彙が限られているうちはすべて覚えようとする必要はありません。でも、それぞれの意味はシンプル。(母音の i と y を除き)イの音を帯びていれば軟子音、それ以外の子音は硬子音こうしいんということだけでも知っておくと、今後の学習で必ず役立つでしょう。
 
 当記事で紹介したのは発音にも関係しますが、格変化で語尾を変えるための規則を学ぶときにも役立ちます。例えば、単数与格の前置格の場合、硬子音だと語尾が -e、軟子音だと -i/-y になります。この解説が今は「?」だとしても、格を覚える頃には納得することができるはず。ある程度のポーランド語力が身に付いてきたら、またこの記事をじっくり読んでみてください。そうすると、「軟子音だからこう変化するのか!」とパズルがピッタリハマるような感覚が得られるかもしれません

ポーランド語の具体的な発音方法

 

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あやか
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4件のコメント

たかちゃん より:

今日は❗ポーランドに旅行に行って、ポーランド語の勉強を始めたオヤジです。まだ3日目(笑)。旅行に行く前から、参考にしています。これからも、楽しく、有益な投稿をお願いいたします。

Ayaka より:

たかちゃん さん

こんにちは (^ ^)
ポーランド語の勉強はつづいているでしょうか。
たまに、こちらでご案内する方の中には熱心にポーランド語ノートや、練習カードなるものを作って持ち歩いている方がいらっしゃいます。
私は一つの旅行に対してそこまでの努力をしたことがないため、感心するばかりです…。
今はまだ忙しいのでなかなか記事が書けませんが、今後ともご愛読のほどよろしくお願いいたします。

たかちゃん より:

ありがとうございます。なんとか続いています。英語では、音声学等、意識したことはありませんでした。ポーランド語を始めて、私にとって最初の関門です。そこで、お時間があるときに、ポーランド語の、有声音、無声音、母音、子音(硬子音、軟子音、ここにも有声、無声あり)、子音の、有声化、無声化の、一覧表のようなものがあれば、初心者にとって大変有難いのですが。勝手なことばかり言って申し訳ありません。また行きたいです。その日を夢見て、なんとか頑張っています。そちらへ伺ったら、お会いできるかもしれませんね。それではまた😃😁😀🇵🇱

Ayaka より:

こちらの記事はちょっとした豆知識程度に書いたものですので、あまり音声学にとらわれる必要はないかと思います。
ポーランド語は他の言語より音が多く難しく感じられますが、日本人のふつうのポーランド語読みでも案外通じるものです。
私も音声学の専門ではありませんので、おそらくこれ以上音声に関する記事は書かないと思います。
(音声学に関しては素人の域なので、素人なりに詳しく書くと誤りがあったり、余計混乱を招く恐れがあります…)
ポーランド語の日常会話がある程度スムーズにできるようになってから、またこちらの記事を読まれることをおすすめします。
私もポーランド語勉強中の身ですので、いっしょに頑張りましょう。

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