正しい発音ができるように…音声学の基本 前編



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ここは、ポーランド語の先生でもない私がレッスンをするコーナーです。ん?と思った方はこちらをどうぞ。
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ポーランド語が美しいのはそう聞こえるよう、しくまれた言語だから。

音声学をちょっとかじった程度の私ですが、入りだしは難しい用語ばかりでそんなに楽しいものではありませんでした。

しかし、ポーランド語と平行して勉強していくうちに「ポーランド語の音で謎だった部分」が解けて楽しくなってきたんです。音声学なので発音での発見の方が多かったですが、格変化の勉強にも役立ちました。格変化を学ぶときはぜひもう1度ここへ戻ってきてください

発音練習は、音声のルールを学習してからの方が絶対楽になります

ということで、この記事ではポーランド語における音声学の基本知識を中心に解説することにしました。

具体的な特徴や例については後編で説明します。音声学についてある程度の知識が既にある方はこの記事を飛ばして先にお進みください。

正しい発音ができるように…音声学の基本 後編

2015.12.10

 

このページの目次
1. 発音をするための器官
2. 軟子音と硬子音
3. イは母音なのに軟子音?
4. 共鳴音と阻害音
5. 有声化と無声化
6. その他、子音に関する注意点

 

発音をするための器官

口腔断面図

口腔断面図

まずはこの口腔断面図の用語を把握しましょう。本格的な音声学ではもっとごちゃごちゃしていますが、さわりだけ学ぶならこの簡易バージョンで十分です。

この図で特に大事なのは口唇(こうしん)、硬口蓋(こうこうがい)、軟口蓋(なんこうがい)、舌、鼻腔、声帯です。咽喉と喉頭蓋はこのレッスンでは気にしなくてもいいでしょう。

用語解説

口唇唇の専門用語。唇は上唇と下唇の2つありますが特にこの2つを意識していう場合は両唇(りょうしん)といいます。

硬口蓋図の硬口蓋とある部分を舌で触れると硬く感じられす。前部にいくほど硬くなり、この部分を硬口蓋といいます。

軟口蓋軟口蓋よりも奥の部分を舌で触れると軟らかく感じられます。後部にいくほど軟らかくなり、この部分を軟口蓋といいます。

鼻腔音声学では「びこう」と読みます。鼻のあなの中をいい、ある発音(マ行やナ行)ではこの鼻腔を使って音をつくります。

声帯のど元にある発声するための器官。人はこの声帯を開けたり閉じたり、振動させたりしながら音を調節し発声/発音します。

 

軟子音と硬子音

硬子音と軟子音の表

硬子音と軟子音の表

硬子音軟子音は、スラブ言語(ポーランド語やロシア語)特有ともいえる専門用語。硬子音は舌が口蓋に向かって盛り上がらない音で、それに対し軟子音は舌が口蓋に向かって盛り上がる音です。

「あいうえお」とゆっくり、ひとつひとつ言ってみて下さい。「い」のときだけ舌が硬口蓋に接近したと思います。

この「イの音色を帯びて発音される音」が軟子音。つまりローマ字で書いたときに “i” があるものや “イ” の音を持つ拗音(拗音では “y” を付加)はすべて軟子音、それ以外の子音は硬子音ということです。

硬子音
p, b, t, d, k, g, f, w,s, z, ch/h, m, n, ł,
sz, ż/rz, c, dz, cz, , l
軟子音 ś, ź, ć, dź, ń, j, pi, bi, fi, wi, mi,
gi, ki, chi/hi

(赤字は硬/軟化子音 後述)
※ ś の´は i の音。よって、ś は si とも表記可。

これらを硬音軟音ということもありますが、この場合は硬音/軟音に母音が付いたものも含めます。例えば、pa, pu, pe, po は硬音、pi は軟(子)音といえます。

特殊アルファベットに疑問を感じた方はこちらの関連記事を先にご覧ください。

ポーランド語のアルファベットと発音の基本

2015.12.01

 

硬化子音と軟化子音
現代ポーランド語のすべての子音は硬子音か軟子音のどちらかに分類できますが、さらに細かく分けると硬化子音(昔は軟子音だったが現在は硬子音の音)と軟化子音(昔は硬子音だったが現在は軟子音の音)があります。

基本的に硬子音と軟子音だけ分かっていればいいのですが、たまに格変化で「この音は硬子音なのになんで軟子音と同じような語尾になるんだろう」と思うことがあります。

そういう時はたいてい語幹の部分がこの硬/軟化子音。日本語にもこのように時代の流れで発音が変わってしまった音はたくさんありますが、これは言語が生きているという証拠でしょう。

 

イは母音なのに軟子音?

よく考えてみると母音である i や y(ポーランド語では y も母音)の付く音を子音と呼ぶのはおかしいですね。

実は i という音は母音の中でも特殊な音なんです。拗音はイ段の仮名にヤ行を小さくしたものを付け加えた音(きゃ/きゅ/きょ など)を言いますが、これらをローマ字にすると kya、子音+イの音を発する母音+母音となります。

そして、この子音と母音に挟まれた i や y は母音ではありません。イの音に変化(軟化)させる役割を持つ記号です。

音声学的に言うと硬音は非口蓋化音、軟音は口蓋化音といいます。

口蓋化は舌が硬口蓋に向かって盛り上がり接近する現象のこと。つまり「イ」の音色を持つ音を指します。口蓋化が発生する拗音やイ段の音に対立する音は非口蓋化の直音(カ/ク/ケ/コなど)。

ヘボン式ローマ字ではこの口蓋化が発生する場合、i や y を使って口蓋化音であることを表します。

ポーランド語における拗音はこの口蓋化音すべて(= キも拗音)を指します。

ちなみに英語のネイティブはこの区別が上手にできないため、東京 tokyo を tokiyo や トゥキオゥ のように発音したり、こんにゃく konnyaku を konyaku のように発音しがち。

紛らわしいですが、これを理解せず文字通りに発音してしまうと mieszkanie(アパート:ミェシュカニェ)を「ミエシュカニエ/ミエシュカ二ェ」と言いがちです。後者でも通じないことはないかもしれませんが、正確に発音をしたい方はここに注意しましょう。

こぼれ話
実は中世以前のポーランド語は日本語のように母音のみと子音+母音の音しかなかったという説があります。

しかし時が経つにつれてこの母音が脱落する現象が見られ、子音の多い言語となりました。ただ子音が目立つと耳障りでぎこちない音になるので、多くは軟音化したと言われています。

このため、現代ポーランド語は拗音が多い言語となったのです。こういった脱落現象は今でも頻繁に見られ、「この格変化、覚えにくいなぁ。形が元と随分ちがうなぁ」と言ったときはたいてい脱落が関係しています。

また、「エ」も口蓋化が起こりやすいので要注意。脱落現象もあれば出没現象もありますが、これらは日本語にも起こりうる現象です。例えば「あした」と言うとき、「し」はささやき声になっていませんか。これは子音のみを発音しているからです。

 

共鳴音と阻害音

子音は硬子音/軟子音に分けることも出来ますが、共鳴音阻害音に分けることも出来ます。ここでは便宜上、分けて説明した方が見やすいのでこの項目をつくりましたが、特にこれらの分け方が特別重要なわけではありません。

共鳴音は、声帯が振動する音を声道内で共鳴させることによって作られる音の総称です。共鳴音はさらに鼻音、流音、半母音(後述)に分けられます。ポーランド語では、m, mi, n, ń/ni, r, l, ł, j がこの音。平たく言えば、濁点の付かない音が共鳴音ということです。一般に共鳴音が多い文は滑らかに聞こえますが、それは濁点の付く音が若干荒々しく聞こえることからも分かるでしょう(例:ガチャガチャ/カチャカチャ)。

共鳴音の具体的な特徴は後編で説明することにして、ここでは鼻音/流音/半母音についてかんたんに解説します。

鼻音(m, n)
鼻腔に気流を通して発音する音。鼻をつまんでマ行やナ行を発音するとこもった感じになります。これは鼻をつまむことによって鼻腔に気流が通らず鼻から息を出せないからです。

流音(r/l
単にRとLの総称と理解してください。日本人はこの流音の区別が苦手ですが、ポーランド語ではこの区別は大変重要なのできちんと発音できるよう練習してください(参考)。

半母音(ł/ j)
日本語ではヤ行(j)とワ行(w) がそうで発音の仕方は母音に近いものの子音的な性質を持つ音です。例えば「言う:iu」が「ゆー:ju」と発音されるように、母音と母音が連続した場合に 実際の発音が異なる(そうした方が言いやすい)のはこの半母音の性質から来ます。

阻害音は、共鳴音の反対で気流の妨害によって作られる音です。阻害音は、さらに有声音と無声音に分けられます。これらを確認する方法として、喉(声帯付近)に手を当ててみてのど元が震えていれば有声音、震えていなければ無声音というのがありますが、日本語は子音だけを意識して発音することないので普通に発音してしまうと(母音は有声音のために)どうしても声帯が振動してしまいます。声帯が振動しない音は「静か に!」のときの「しーっ」。声帯が振動しませんね。これが無声音です。

ポーランド語の阻害音は、p(pi)-b(bi), td, k(ki)g(gi), f(fi)-w(wi), s(ś/si- ź/zi), szż/rz, ch/h, c-dz, cz-dż, ć-dź(ci-dzi) です。

p(pi)-b(bi), t(ti)-d(di)…と対になるように表しましたが、これは「p は b の無声音=b は p の有声音、t は d の無声= d は t の有声音…=濁点が付く子音は有声音、付かない方は無声音」という意味。

このように対となるような音を持つ(ch/h は有声音の前では有声化する特殊な無声音)のが阻害音。共鳴音は有声音ですが、これらには無声音との対がなく有声音のみとなります(無声化あり)。

補足説明
日本語で考えると p-b は f-b/w とした方がしっくり来ます。しかし、これは日本語の音の変化によるもので平安時代まではハ行の対となる音はパ行(p-b)でした。これも言語は変化するという性質によるものであり、違和感を感じられるのはそのためです。

阻害音は有声音/無声音以外にももう1つ分け方があります。それは、閉鎖音、摩擦音、破擦音の3つです。

破裂音または閉鎖音(p, b, t, d, k, g )
「パ/バ」を発音してみると、上唇と下唇を閉じその瞬間開けていることが分かります。「タ/ダ」を発音すると、舌の先に歯の裏側を付けその瞬間に離していることが分かります。このように上下の位置になる部分がそれぞれ接近もしくは接触し、鼻腔への通路が閉じらることで発声する音が破裂音/閉鎖音です。

摩擦音(f, w, s, z, sz, ż, rz, ch/h)
破裂音は閉鎖をすることで音をつくりますが、摩擦音は閉鎖をつくらない程度に声門から口腔内のどこかの器官を狭めて生じさせる音です。破裂音が1回1回閉鎖を行わないと発せられないのに対し、摩擦音は息が続く限り連続して音を発することができます。

破擦音(c, dz, cz, dż)
破裂音/摩擦音を合わせたものが破擦音です。破裂音/摩擦音のように上下の器官で呼気を止め、それと同時に摩擦音のように器官を狭めることによって生じます。動きを観察するようにゆっくり「ツ」と発音してみると分かるでしょう。これらの音はローマ字ヘボン式で表すときに子音が2つになるのが特徴です。

 

共鳴音 m, n, r, l, ł, j
阻害音 p, b, t, d, k, g, f, w, s, z, sz, ż/rz,
ch/h, c, dz, cz, dż, (ć-dź)

※見にくくなるので表には入れませんでしたが、共鳴音では m と n、阻害音では t-d, sz-ż/rz, ch/h, c-dz, cz-dż, ć-dź がそれぞれ軟音化を表す i またはクレスカの付くものが含まれます。
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大辞林より引用

大辞林 より引用

たくさん説明してきたようですが上の表を見ればわかる通り、本格的な音声学ではもっと専門用語がでてきます

ここで触れたことはほんの一部にすぎません。なので、音声学をある程度知っている方が見ると「もうちょっと良い言い方があるだろう」と思うかもしれませんが、初心者向けなのであえて難しい用語は出さないようにしました。

補足説明
ここまで様々な音の種類を説明しましたが、鼻音/流音/半母音や閉鎖音/摩擦音/破擦音についてはポーランド語を専門として勉強している方以外は覚えなくても問題ありません。私のメモ書きのようなものですが、誰かの役に立つかもと思って書いてみました。

 

有声化と無声化

アルファベットの音を覚えていれば、ポーランド語を読むことができます。しかし、ポーランド語に慣れてきたら今度は実際の綴りとは違うように発音される単語があることに気付くでしょう。

これは子音の同化と言われる現象で、有声子音が次の音に影響されて無声化(はっきり聞こえなかったり、半濁音になる)したり無声子音が有声子音に影響されて有声化(濁音になる)する現象を言います。日本語で「いただきます」と言うと「す」がささやいた時の「す」の発音になりますが、これが無声化です。

有声化というのは日本語にもあるにはあるようですが、無声化より例が極端に少なくて思いつきません…。

具体的な例

有声音の無声化
łóżko – ベッド は綴りは「ウジュコ」ですが、実際は łószko「ウシュコ」と発音します。これは有声音「ジュ」が無声音「シュ」に変わっているからです。
chwila(フィラ→フィラ:ちょっとの間)、twaróg(トファル→トゥファル:フレッシュチーズ)、chleb(フレ→フレ:パン)、jabko(ヤコ→ヤコ)、kładka(クワゥカ→クワゥカ:歩道橋)

無声音の有声化
prośba – 要求 は綴りは「プロシバ」ですが、実際は proźba「プロジバ」と発音します。これは無声音「シ」が有声音「ジ」に変わっているからです。この有声化は日本語のようにポーランド語でもあまり見ません。
liczba(リュバ→リュバ:数)、wykrzyknik(ヴェジェクニック→ヴェジェクニック:感嘆符)、także(タジェ→タジェ:〜も)、jakby(ヤベ→ヤベ:もし)

有声音や無声音が無声化、有声化する場合は必ず互いに対となる音になっています。下の表で確認してみてください。上段は無声音、下段は有声音です。

p f t s c sz cz ś ć k
b w d z dz ż/rz ź g

※日本語での有声音 ナラマワガザダバ行
※日本語での無声音 カサタハパ行

有声音のみの共鳴音は無声音とのペアを持ちませんが、これにも同化現象が見られます。しかし共鳴音の場合は意識をしなくても自然と無声音のように発音するので気にしなくてもいいでしょう。

他にも同化現象が見られることがありますが、これらはポーランド人の間でも個人差があり例も少ないことから省略します。もし、上記に当てはまらないときで同化現象が見られた場合はむしろ例外として覚えた方がいいかもしれません。あまりルールを気にしていると素直に読めなくなり、それもそれで問題です。

 

その他、子音に関する注意点

以下のようなパターンの発音もついでに覚えておきましょう。

子音に挟まれた ł は発音しない方が自然。例:×ヤプゥコ ○ヤプコ
語末の ł は発音しない方が自然。ただし、過去形を表す -ł は発音する。
ch, sz, rz, cz, dz, dź, dż はそれぞれ1文字である。別々で発音しないこと。
同じ子音が続く場合は、分けて発音する。例:lekko ×レッコ ○レクコ
ci, si, zi, dzi, ni が母音の前にある時(日本語で言う拗音)は、i は軟音化を表す記号なので i をハッキリと発音しない。
例:ciastko ×チアストコ ○チャストコ

 

お疲れさまでした。専門用語がたくさん出てきて混乱したかもしれませんが、語彙が限られているうちはすべて覚えようとせず、理解しながら読んでもらえたら大丈夫です。語彙が増えたり、ある程度話せるようになったり、ポーランド語の音に耳が慣れてきてから、またこの記事を読むと「なるほど」と思えるはず。

最後に…。私の音声学の知識はすべて独学で得たものです。もし間違いや勘違いがあればご指摘をお願いします。

 

後編では具体的にポーランド語アルファベットそれぞれのルールに焦点をあてながら解説しまいた。ポーランド語になれてきてちょっと余裕が出てきた方はこちらもお読みください。

正しい発音ができるように…音声学の基本 後編

2015.12.10

 

最後までお読み頂きありがとうございます☆
あやか
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